鴨志田穣(ゆたか)さん。その名は知らなくても奥様だった漫画家、西原理恵子さんをご存じの方は多いだろう。西原さんの家族漫画『毎日かあさん』では離婚したことについてさらっと描かれていたが、愉快で楽しいほのぼの漫画の裏には、壮絶な事実があったのだ。
鴨志田さんは重篤な「アルコール依存症」患者だった。家ではモンスターと化し、妻子を苦しめていた。そしてアルコールが原因で離婚。『酔いがさめたら…』は離婚後から始まる「僕」の回想である。
母親のいる実家に戻っても、やはり朝から晩まで酒におぼれる日々。「よし、酒は今日でお終いだ」「素面のままで、妻と子どもたちに会うんだ」。何度も何度も断酒を誓うが、どうしてもやめられない。
結局、心身が限界に至る。転倒、骨折、血尿に血便、吐血。そして恐ろしい幻覚幻聴。精神科の病院でアルコール依存症患者の病棟に入院することになった。
これまでも入退院を繰り返したが、そこで訳ありの患者たちに出会う。私には暗いイメージがあった専門病棟だが出てくる面々はユニークな人たちばかり。そして、すべてをさらけ出さなければ治らないということを知る。情けなくも悲しい、ダメな人生のすべてを。
鴨志田さんは戦場カメラマンだった。紛争地を巡り、悲惨な現場を体験した。いつしか酒量は増え、気づけば後戻りできなくなっていた。やがて癌が見つかり、余命を宣告される。
最後に。鴨志田さんは切望していた「うち」へ、妻子のもとへ帰ることになる。西原さんは目覚めた鴨志田さんを「ハスの花が咲いたような」顔で励ました。
ようやく酔いはさめたのだ。
大阪府豊中市 小林恵子(42)
◇
投稿はペンネーム可。600字程度で住所、氏名、年齢と電話番号を明記し、〒556―8661 産経新聞「ビブリオエッセー」事務局まで。メールはbiblio@sankei.co.jp。題材となる本は流通している書籍に限り、絵本、漫画も含みます。採用の方のみ連絡、原稿は返却しません。二重投稿はお断りします。






























