朝晴れエッセー

    偽りの100点・7月16日 

    小学6年生のときのことである。

    「今回のテストで、100点が出た。西口だ」。担任の先生が笑顔で言った。意外な名前が出たことで、クラスは「おう」という驚きの声や祝福の拍手などで騒然となった。

    しかし、そのとき私は「えっ」と小さな声をあげていた。猛勉強はしたが、漢字の書き取り問題で一つ間違ったことを知っていたからだ。

    答案を返してもらうと、100点の大書を尻目に例の場所を見た。間違った漢字の上に丸がついている。先生がミスをしたのだ。答え合わせの説明でも私の間違いは明白だった。

    「どうしよう、先生に言いに行かないと」と思ったが、めったに取れない100点である。母に見せたらどんなに喜ぶだろう。弟たちにも兄の威厳を示せる。級友に対する優越感も心地よかった。

    でも、これは間違いだ。いろいろなことが頭を巡った。今でなくてもいい、放課後に言いに行こうと思った。

    しかし、結局、私は偽りの100点に負けてしまった。そればかりか帰り道で、間違いを訂正し証拠隠滅を図り、母に「100点取った」と見せた。母は大そう喜び、私を褒め続けたが、それに反して私の心は暗くなっていった。

    事実を言い出せなかった悔恨の念は、今にいたっている。

    あのとき正直に、99点を持ち帰っていれば「そんな100点よりこっちの方が、立派な99点だよ」と、母は言ってくれたに違いない。

    西口和久 69 大阪府藤井寺市


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