エネルギー基本計画の素案には原発の新増設やリプレース(建て替え)に関する記載が盛り込まれず、今後も議論が進まなければ、電力各社は経営戦略の見直しを迫られそうだ。特に電源構成で原発の割合が高い関西電力は、再生可能エネルギーの電源整備を急ぐ必要がある。設備投資などでコストがかさめば、電気料金に転嫁せざるを得ない不安も出てくる。
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令和元年度の国内発電量全体のうち原発の比率は約6%だったのに対し、関電は約27%を占める主力電源となっていた。
また関電は今年6月、福島での原発事故後、全国で初めて運転開始から40年以上たった原発の再稼働を実現。脱炭素に向け小型原子炉の開発を検討するなど、温室効果ガスを排出しない電源として積極活用する姿勢を示してきた。
ただ、廃炉が決まったものを除く関電の原発7基のうち、すべての運転期間を60年間まで延長したとしても、32(2050)年の時点では2基しか残らない。
これまで森本孝社長は「将来、新増設やリプレースがおのずから必要になるときは来る」と述べていただけに、今後認められないようなら経営戦略の転換は不可避だ。
だが、水力発電を除く、太陽光や風力などの再生可能エネルギーは関電の全電源のうち1%未満にとどまる。再エネ電源の開発には用地の取得や人材の育成が必要になるのはもちろん、設備投資に巨額のコストがかかる。新電力との競争激化も逆風になって収益が確保できないと、コストが電力料金に跳ね返ってこないとは言い切れない。
また、再エネは天候に左右される側面がある。安定供給のためには、日頃は動かさず、供給が不安定になったときのみ動かす火力発電の維持も重要で、コストがかかる。こうした点は、同じく電源構成に占める原発の比率が高かった九州電力、四国電力などにも共通の課題となりそうだ。(岡本祐大)