児童書

    『マートくんのレストラン』たざわたえこ作、ひすいしょう絵 物語と子への愛を残し

    男の子のマートくんは、成長してコックさんになった。そのきっかけは、子供のころに体験したある出来事。自転車のかごいっぱいにパンをのせたお姉さんに出会った。おいしそうなにおいに誘われ、ほかの子供たちと一緒に付いて行くと、すてきなパン屋さんにたどり着いた。焼きたてのパンに子供たちが手を伸ばすと、お姉さんの姿が一変。子供たちの運命は―。

    作者のたざわたえこさんは2人の子供の母で、絵と物語が好きだったが、平成30年2月、アルコール依存症のため47歳で他界した。本作は、夫の田澤浩一さんが遺品から草稿を見つけ、クラウドファンディングで資金を募って出版に至った。依存症の患者は心が別人のようになり、家族につらい言動を投げかけてしまうことがある。だが、この物語は悪者をも包み込むような優しさが感じられる。作品について巻末で田澤さんが記した。「彼女が世の中の母親たちと同様に子どもたちを愛していたということは、十分にうかがい知ることができます」(銀の鈴社・1980円)

    中島高幸


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