原爆投下後の広島の現実をいち早く暴いた米ジャーナリスト、ジョン・ハーシーのルポルタージュ『ヒロシマ』(1946年)。核兵器の恐ろしさを世界中に伝えたこの名著の舞台裏に、気鋭の米作家が丹念な取材で迫っている。
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非道な兵器を使用したとの批判を避けるため、被爆地の情報を厳しく統制し事実の隠蔽(いんぺい)に走る米政府。そんな中、広島入りしたハーシーは生存者6人の証言をスクープする。「文明に何か意味があるとしたら、悪の道に引きこまれた凶悪な敵にさえも、その人間性を認めなければならない」。人間の尊厳を見つめるハーシーの言葉は今も重い。(レスリー・M・M・ブルーム著、高山祥子訳/集英社・1980円)