「命かけて遊んでる」現代美術家の三島喜美代さん 都内3カ所展示

    面白そう。やってみたい-。好奇心をエンジンに、現代美術家の三島喜美代さん(88)は60年以上、創作を続けてきた。ご本人の表現を借りれば「ゴミを一生懸命作ってます」。社会へと常にアンテナを張り、自らのフィルターを通して時代を捉えた作品は近年、国際的にも注目されている。いま東京都内の3カ所で三島作品を鑑賞できる。

    新作「作品21-A」(2021年)など三島喜美代さんの展示=東京都港区の森美術館
    新作「作品21-A」(2021年)など三島喜美代さんの展示=東京都港区の森美術館

    ひっくり返ったタンクから、くしゃくしゃの新聞紙があふれ出る。近づいてよく見てほしい。すべて陶でできているのだ。

    東京・六本木の森美術館で開催中の「アナザーエナジー展」。世界各地で創作に挑み続ける70歳以上の女性アーティスト16人を取り上げた企画展で、三島さんの展示が掉尾(とうび)を飾る。

    三島喜美代さん(永田直也撮影)
    三島喜美代さん(永田直也撮影)

    この新作のために、三島さんは開幕数カ月前から来る日も来る日も、足の痛みに耐えつつ、薄くのばした粘土に独自の方法で新聞を転写し焼き上げていったという。その数、130個。まるで情報の残骸が流れ出ているようだ。

    □ □

    大阪の下町、十三(じゅうそう)に生まれ、今も同地と岐阜県土岐市にアトリエを構える。10代の頃から自由な表現が許される絵画にのめり込み、20代前半で画家の三島茂司氏と結婚。前衛美術集団、具体美術協会を率いる吉原治良に師事した夫は当時の男性にはめずらしく、妻が自由に才能を伸ばすよう〝解放〟してくれたという。

    今年7月に東京・東品川にオープンしたばかりのギャラリー「Sokyo Atsumi」で三島さんの個展が開かれており、20代半ばで描いた最初期の油彩画「無題」を初公開している。厚塗りの絵肌から感じられる、粗削りなパワーや渇き。他にも代表的シリーズや新作、そしてイメージと印刷物(新聞や雑誌など)をコラージュした1960年代の平面作品も。既に「情報」に対する三島さんの関心が見て取れる。

    新聞紙を陶で表現し始めたのは70年代初頭。「陶器は落としたら割れる。陶の新聞を作ったのは、情報時代の危機感を表現したかったから」。今春、産経新聞の取材で三島さんはこう話していた。社会に氾濫し消費される情報。その〝器〟である新聞を壊れやすい陶にすることで、「大切に扱わなければならない」という意味も込めているのだろう。

    一見ゴミ籠の空き缶も、実は印刷した陶に手彩色した作品。大量生産、大量消費社会が出すゴミを、あえて一生懸命作る。しかも三島さんは、気の向くままに集めた物(一般にゴミと認識されそうなもの)を所狭しとアトリエに保管しては、新たな作品の材料にする。ゴミも宝となるのだ。

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    陶の作品が国内外で注目され、50代にしてロックフェラー財団の奨学金で米国留学も果たした三島さん。ただし陶芸の範疇(はんちゅう)で語られることが多かったために、現代美術としての評価が高まったのは近年だという。

    三島作品を常設しているアートスペース「ART FACTORY城南島」(東京都大田区)。1万個余りの耐火レンガを床に敷き詰めたインスタレーションが圧巻だ。その一つ一つに1900~2000年の新聞記事が転写されている。ヒトラー台頭、チェルノブイリ原発事故、日航機墜落など歴史的事件から時代ごとの雑多な広告まで、図書館のマイクロ資料から自ら選んだ記事という。

    制作期間はざっと30年。とことん自分が面白いと思うことを追求する人なのだ。ふと、森美術館の展示で紹介されていた三島さんの言葉を思い出した。

    <命かけて遊んでるっていう感じですね、一生。>

    (黒沢綾子)

    森美術館「アナザーエナジー」展は9月26日まで。Sokyo Atsumiの「三島喜美代個展」は同月30日まで(予約制、新型コロナ感染拡大防止で同月13日まで臨時休廊)。ART FACTORY城南島は日時指定予約が必要。


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