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【朝晴れエッセー】兵籍簿・8月20日

「西部ニューギニアってどこ? インドネシア領? じゃあバリ島までなら行くわ」。妻の一言である。

私の祖父はサイパンで戦死した…らしい。34年前に病没した父からはそのように聞いていたのだが…。爾来(じらい)、父が果たせなかったサイパンへの慰霊の旅は、何となく私が引き継いでしまった。

今春、公務員を定年退職した。かねて妻から退職記念の海外旅行をねだられていた私は、不謹慎にも退職記念と慰霊の旅を一緒にやってしまえと考えた。

でも、待てよ。ホントにサイパンなのか。疑問に思った私は祖父の兵籍簿を取り寄せることにした。

一週間後、県の担当課から交付された兵籍簿には、達筆な手書きで「昭和19年12月22日 西部ニューギニアにてマラリヤと脚気(かっけ)により死亡」と書かれていた。えっ、サイパンじゃないの、マラリア?脚気?

そこで調べてみた。ニューギニア戦線には20万人の将兵が投入されたものの、帰還した者はわずか2万人。戦死者の多くはマラリアなどの感染症や栄養失調、つまり餓死であったらしい。

兵籍簿のその手書きの一行に、私の知らない戦争の過酷さ、祖父の苦しみ、悲しみ、怒り、無念さ、そして朦朧(もうろう)とする意識の中で祖国や家族へはせた想いなどが一瞬垣間見えた気がした。

私は決意を新たにする。おじいちゃん、このコロナが収束したら必ず行きます。

幸い妻も途中まで一緒です。でも、バリ島から先はどうやって行けばいいのだろう。

中山雄一郎 61 長野県佐久市


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