話の肖像画

    評論家・石平(20)「特別な立ち位置」保守論壇が注目

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    《2000年代半ば以降、中国問題をテーマに、本の出版や論壇誌での執筆などを続け、次第に注目を集める》

    出版社の編集者だけでなく、主に保守系の論壇で活躍されている評論家の方たちとも知り合いました。

    例えば、産経新聞社発行の論壇誌『月刊正論』に書くきっかけは、勉強会で知り合った評論家の宮崎正弘(みやざき・まさひろ)さんが、大島信三(おおしま・しんぞう)編集長(当時)を紹介してくださったからです。そうやって徐々にですが、いろいろなメディアに仕事が広がっていくようになりました。

    こうした中で、もっとも大きな転機となったのが、2009(平成21)年から、産経新聞紙上に「石平のChina Watch」の連載を始めたことですね。声をかけてくださったのは、産経新聞社副社長を務めた斎藤勉さん(現・論説顧問)。現在も続いているこのコラムを書かせてもらったことで、注目を集めることになり、テレビからも出演依頼が来るようになりました。執筆活動で安定した収入を得られるようになって、完全に軌道に乗ったのは、10年ごろでしょうか。

    《保守論壇における「中国ウオッチャー」としての人気はますます高まっていく。その理由のひとつは、他にはない異例のキャリアにあった》

    僕は中国人として生まれ、大学教育までうけた「知識層」です。文革期に少年時代を過ごし、中国共産党による〝洗脳〟教育も経験しました。だから、彼らの〝やり口〟がよく分かっている。その後、日本へ留学し、日本人のホスピタリティーに救われ、精神性の高さにも触れました。民主主義や自由の尊さも知っています。

    07年には帰化して、日本国籍を取りますが、日本で生まれ育ったわけではありません。つまり「元中国人の日本人」。こうした特別な〝立ち位置〟で評論・執筆活動を行っている人間はそんなにいないでしょう。〝純粋な日本人〟ではないからこそ、気付くこともあるし、できることがあるのです。

    僕は誰に対しても、どこの政府に対しても遠慮をする必要がありません。言いたいことを言って、書きたいことを書く…そのスタンスを貫いてきました。もっと言えば、本を売るため(食べていくため)に書いているわけでもない。もちろん売れるに越したことはありませんが、どうしても「書かずにはいられないこと」があるのです。それを書いてきた。

    あえて、自己分析をすれば、そうした姿勢が評価されているのかもしれませんね。

    《他にはない「独自の視点」も人気の秘密だ》

    僕の視点や見方は、他の人とはかなり違うと思います。中国の「反日教育」の実態や、朝鮮民族が歴史上、実は〝加害者〟だったことなどは、他の人はほとんど書いていません。

    僕は、資料を徹底的に調べて、それをできるだけ分かりやすく書く。学者ではありませんからね。心がけているのは、「噂」や「ウラが取れない話」は書かないことです。迷惑がかかるのでニュースソースにしている人物もいません。

    中国問題ならば、人民日報(中国共産党機関紙)などが書く「公開情報」を分析して、その背景にある動きや思惑を自分なりの視点で探り、掘り下げていくのが僕のやり方です。(聞き手 喜多由浩)

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