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【書評】『潜入・ゴミ屋敷 孤立社会が生む新しい病』笹井恵里子著 体当たり取材で原因探る

本書は、平成30年から令和3年までのおよそ3年間にわたって、著者がゴミ屋敷の整理清掃業者の作業員として働き、まさに命がけの体当たり取材を行ったルポルタージュである。私はその冒頭から引き込まれた。以下は本書からの引用である。

『潜入・ゴミ屋敷 孤立社会が生む新しい病』
『潜入・ゴミ屋敷 孤立社会が生む新しい病』

「好きなものを次々に買ってはいつまでも捨てられない、飲み食いしたものをすぐに片付けられない、テーブルの上に物が山積みになっている(略)。現在は仕事をし、社会生活が送れているとしても、『片付けられない人』の家は何かのきっかけで『ゴミ屋敷』になる可能性がある」

自分の近い将来のことを言い当てられているようで、ぞっとしたのだが、同じように思う人は私だけではないだろう。

それにしても、著者のゴミ屋敷清掃作業体験は壮絶だ。とくに山積みのゴミの中で孤独死した人の住居の清掃作業はすさまじい。重度のゴミ屋敷になるとトイレにたどりつけず、ペットボトルで排尿するようになり、レジ袋に排便をするようになるという。さらに、ゴキブリやミミズが大量にわく場所に手を突っ込んで処理しなければならない過酷な作業が加わる。

作業員の中には小さな傷口から雑菌が入り込み、抗生剤を投与するも回復せずに足を切断することになった人や感染症にかかった人もいるそうだ。

そんなゴミ屋敷の住人は意外なことに一流企業に勤める人、医療関係者、教師など社会的地位の高い人が少なくないという。彼らはなぜそこまでゴミをため込んでしまうのか。著者はそうした疑問や謎を社会学者や精神科医などに取材して、原因がどこにあるのかを探り、さまざまな要因が重なり合っていることを突き止める。

そして最終章では、ゴミ屋敷で孤独死しやすい高齢者の特徴や物の減らし方、悪徳清掃業者を見分けるコツなどを紹介し、物をためこむ状態に悩んでいる人や近い将来ゴミ屋敷化しそうな人に防止策を提示している。

新型コロナウイルス禍でステイホームが推奨され、在宅期間が延びたことで孤独を感じる人が多くなっている今、ゴミ屋敷は確実に増加傾向にあるという。本書は大変な労作にして良書である。ぜひ一読を薦めたい。(中公新書ラクレ・902円)

評・西川司(作家)


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