2025年大阪・関西万博に向けて政府がまとめたインフラ整備計画案が判明した。内容は大阪府市や関西財界などが7月に政府に提出した要望書に幅広く沿ったものとなった。大阪・関西の期待に応えつつ、万博を国家プロジェクトとして推進するとの政府の姿勢を改めて示した形で、関西の政財界から歓迎されそうだ。
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「万博はナショナルプロジェクトだ。国として、しっかり関与してもらう必要がある」
ある関西財界の首脳はこれまで、万博をめぐりこのような発言を繰り返してきた。会場建設費の寄付金集めで関西の財界に比べ、首都圏の財界の動きが大幅に遅れていることを受けた発言だったが、その言葉には「東京五輪の成功を優先するあまり、東京や政府は万博への関心が薄いのではないか」との疑念がにじんでいた。
そんな中、東京五輪開幕直前の7月2日、大阪府の吉村洋文知事、大阪市の松井一郎市長、大阪商工会議所の尾崎裕会頭らが都内で菅義偉首相と面会し、「2025年日本国際博覧会関連事業に関する要望」と題した要望書を提出した。
財界関係者はその狙いについて「五輪の開幕に向けて首都圏では高速道路などのインフラ整備が進んだように、万博という機会を捉えて関西でも同様の発展を実現させたいとの思惑があった」と語る。
今回判明した政府のインフラ整備計画案は、基本的にその内容に沿ったものだ。すでに進められている事業も多いが、改めて国が関与する姿勢を表明した意義は小さくない。
関西では新型コロナウイルス禍の収束後、回復が見込まれる訪日外国人客の需要を中心とした観光産業が経済の軸になるとの見通しもあり、今回の計画案も関西国際空港の機能強化やなにわ筋線整備、淀川の舟運機能強化といった、観光産業の発展への寄与が期待される事業が多く含まれている。
井上信治万博担当相は27日、大阪市内で関西経済連合会や大商、関西経済同友会の首脳らと意見交換を行う。そこでは、今回のインフラ整備計画案に盛り込まれていない、ライフサイエンスやデジタルなどの分野での国による関西への協力の可能性についても話し合われるとみられており、そちらの進展も期待される。(黒川信雄)