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【近ごろ都に流行るもの】「昭和のシティポップ」 音楽の〝和魂洋才〟国境と時代を超え魅了

松原みき、竹内まりや、大貫妙子…。日本が最もきらびやかだった昭和後期から平成に向かう1980年代前後に、最先端の音響技術とお金をつぎ込んだダンサブルで都会的なサウンド「シティポップ」が今、世界的な人気を集めている。海外ユーチューバーによる日本語カバー曲がヒット。名曲発掘の機運が高まり廃盤の復刻も相次ぐ。コロナ禍でインバウンドが激減しているが輸出が好調で、逆輸入的に日本のファンも拡大中だ。洋楽のリズムに浮遊する日本語の韻が心地よい。これも「和魂洋才」という日本のお家芸であったのかと、令和になって気がつく。

タワーレコード新宿店で人気のシティポップCD。中央上が松原みきのベスト盤
タワーレコード新宿店で人気のシティポップCD。中央上が松原みきのベスト盤

♪真夜中のドアをたたき、帰らないでと泣いた…。昭和54年発売。松原みきのデビュー曲「真夜中のドア Stay With Me」を、頭にヒジャブを巻いた現代の若い女性が、切ない情感で歌いあげている。日本語は話せないそうだが発音は正確だ。

インドネシアの人気ユーチューバーのレイニッチが、昨年10月末に公開したカバー曲。再生回数540万回を超えるなどブームの起爆剤となった。松原の原曲も音楽配信「スポティファイ」のグローバルバイラルチャート20日間連続1位という快挙を達成。韓国の著名なDJであるナイトテンポによる「ザ・昭和グルーヴ」と銘打ったmixなどでも話題になり、日本で42年後にあたる今年3月、デビュー当時のレコードがポニーキャニオンから復刻発売された。直近でもNHKテレビの音楽番組で特集されるなど、日本での関心も盛り上がっている。

「きざしは5、6年前から。欧米の音楽マニアたちが、シティポップのレコードやCDを探しに来店するようになった。録音機材や演奏スタイルが革新され、コンテンポラリーな日本のポップスが生まれた、70年代後半~80年代への強いこだわりを感じました」

シティポップ売り場を展開する、タワーレコード新宿店の田中学さん(50)が振り返る。シティポップの魅力を解説・発信しているエキスパートだ。

「日本経済がバブルに向かっていく時代。音楽にもぜいたくにお金と技術がつぎ込まれ、完成度の高いシティポップが大量に生産された。掘っても掘っても名曲が出てきます」

リズムマシンを駆使。16ビートを基調としたダンサブルなサウンドは、当時世界的に流行したAOR(大人志向のロック)の影響を受け、外国人にもなじみやすい洋楽である半面、心地よい日本語歌詞のエキゾチックさは他にない魅力だ。

タワーレコードでは、原曲とカバー32曲収録の2枚組CD「シティポップヴォヤージュ スタンダードベスト」(3520円)を発売。レイニッチの歌声もこの盤で初CD化された。

また、日の目をみずに消えた幻のシティポップを発掘し100枚以上のCDを復刻再販している。「素晴らしい音楽性なのに、山下達郎になれなかった人がこんなにいるんだ…」。田中さんは感慨深げに話す。

訪日外国人が途絶えるなか、日本の商品を海外へオンライン取引する「バイイー」ではシティポップの流通量(輸出)が、今年に入り前年の2倍ペースで伸びている。特に売れているのがLPレコード。オランダの20代男性ユーザーは「日本で直接買ったものと合わせて173枚の日本のレコードを持っている。温かくなめらかな音質の良さと、ゴージャスなジャケットのアートワークが魅力」。

タワーレコードでも9月23日、渋谷店内にアナログレコード専門店を開設する。在庫数約7万枚のうち半数が中古で、店頭買い取りも行う。シティポップのレコード価格は世界的に高騰し1枚1万円以上の値が付く盤もあるという。「今主流の配信と違って、音楽がモノとして存在するからこそ、後世に引き継ぐことができる」と田中さん。

日本の音楽文化とモノづくりの豊かさを改めて感じさせるシティポップ。名曲とともに、あの頃の自信も取り戻したいものだ。(重松明子)


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