もう8月も末なのに、まだまだ暑い日が続いている。食欲も落ちがちだが、そんなときでも冷たい料理は食べやすい。いまではラーメンや茶漬けなどさまざまな「冷やし」があるが、ちょっと聞き慣れないものに「冷やしかつ丼」がある。暑い日でもとんかつを楽しめるように…。それは進化を遂げた新しい姿のかつ丼だった。
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見た目も涼しげ
冷やしかつ丼を提供しているのは、とんかつ専門店「かつ吉」。都内に4店舗を展開している。揚げたてのとんかつを、かつお節などから取ったしょうゆ味の冷たいだし汁がかかったご飯と一緒に食べる夏季限定の商品だ。オクラ、キュウリ、ミョウガなど夏野菜のほかに、梅やとろろも彩りとなり、見た目にも涼しげだ。
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暑い日、揚げ物は少々重い感じがあり、ともすれば敬遠されてしまう。そこで「冷やし中華」のような、とんかつを使った新しいメニューを作ろうとしたのが誕生のきっかけだった。
かつ吉の新丸ビル店で店長を務める佐藤淳一さん(46)は「夏になると、この商品を求めて店を訪れるリピーターの方も多い。暑い日にはオーダーの3分の1を占めてしまうくらいの人気」と話す。
商品化までは試行錯誤の連続だったという。
「普通に作ったかつ丼をそのまま冷凍庫にいれてみたこともあったそうだが、あまりおいしくなかったらしい」
だし汁にご飯を入れ、とんかつを乗せる-。そんな方向性が決まり、平成14年に誕生した冷やしかつ丼だが、当初から人気商品というわけではなかった。
「15年ほど前までは、売れても1日に1、2食という感じだった」と佐藤店長。しかし、テレビ番組で紹介されたことや口コミなどを通じて、少しずつファンを増やしていったという。今では夏の看板メニューとなっている。
喉をスルスルと
冷やしかつ丼のだし汁はしょうゆ味のものが基本だが、店舗によってはカレー味や辛みそ味などがあり、違うバリエーションを楽しめる。肉も「銘柄豚ロース」(ランチ1800円)と「銘柄豚ひれ」(同1900円)がある。
目の前に運ばれてきたロースの冷やしかつ丼。器を持つと、まずその冷たさに驚いた。だし汁に氷が浮いていることもあるが、丼そのものも冷やして使っているこだわりよう。だし汁は、氷がとけても味が薄まらないように濃いめの味付けになっているのがポイントだ。米は炊き上げた後に冷水で洗って、さらに冷蔵庫で冷やしている。
国産豚を使ったとんかつは、衣にしっかりとだし汁が染み、甘味を感じるジューシーな肉に不思議とマッチしている。別添えのワサビを入れると、少しピリッと、〝味変〟も楽しめる。添えられた夏野菜とともに、最後までスルスルと喉を通っていった。
冷やしかつ丼は、登場して今年で20年目。
「これまでのイメージを覆される商品だと思うが、これからも『夏のごちそう』と位置付けられる商品にしたい。特に暑い日に、ぜひ食べてほしい」
今年も9月末まで提供される予定だ。(太田泰)