新型コロナウイルス流行の「第5波」で子供たちの感染が急拡大する中、9月から小中高校で新学期が本格的に始まる。文部科学省は一斉休校を要請しない考えで、学校側が個別の状況に応じて学級閉鎖などの対応を取ることになる。首都圏の1都3県では、臨時休校や授業時間の短縮に踏み切る自治体も目立つ。授業の準備を進める学校現場には、感染対策に追われる教職員の姿が見られた。
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30日午後3時過ぎ、東京都足立区立綾瀬小学校では、数人の教員らが体育館に長机を並べていた。9月1日が始業日だったが、数日前に区立校は夏休み明けの臨時休校が決まり、始業が13日に繰り下げられた。
職員室では、別の教員らが休校中の自宅学習に使うプリントづくりに追われていた。急遽(きゅうきょ)、夏休みの「登校日」となった1日は、子供たちが1時間ごとに約20人ずつ分散して登校し、体育館で担任に夏休みの宿題を提出、プリントを受け取って帰路につく。教室には入らず、滞在時間はわずか5分間にとどめる。
机を並べながら、女性教員が肩を落とした。「子供たちの顔をじっくり見て話したいが、今は難しい…」
授業再開以降も、昨年から継続した校内の感染対策を徹底させる。校舎の玄関や教室の入り口には、検温器と消毒噴射器を設置。机の間隔を1メートル以上確保するため、教職員がものさしで床を測り、テープで机の位置の目印をつけていた。
給食も話さず食べる「黙食」を徹底してきた。独自にフェースガードを配り、授業でも話し合いの際には、子供たちにマスクの上から着用させている。
学習の遅れも心配だ。オンライン授業を進めたいが、児童1人に1台を割り当てるタブレット端末の配布は夏休み明けまでずれこんだ。6年生を担当する志田稔教諭(38)は「十分に使いこなせるか不安だが、できるだけ早く自宅学習の日もオンラインで授業を受けさせられるようにしたい」と意気込んだ。
学校生活で身につくのは知識だけではない。臼田治夫副校長(52)は「人と一緒に何かを考えることで、社会性が身につく」と強調する。だが、感染力が強いとされるインド由来の「デルタ株」の蔓延(まんえん)により、学校で感染した児童が家庭にウイルスを持ち込み、家族間で感染が広がる懸念は強まる一方だ。
臼田副校長は「学校が始まる2週間前から、教職員は外出を控えるようにするなど感染対策を徹底させてきた。子供たちを守りつつ、学校運営を工夫していきたい」と力を込めた。
分散登校や短縮授業、臨時休校も
昨年のような全国一斉休校は要請しない方針の文部科学省は「地域の事情に合わせて判断を変えていく」(萩生田光一文科相)として、学校側に教育活動の継続と感染対策の両立を求める。
文科省は緊急事態宣言と蔓延防止等重点措置の対象地域で、感染者が出た場合に学校側が対応を判断するためのガイドラインを策定。指針に従えば、1つの学級で子供2、3人の感染が判明した場合、5~7日程度を目安に学級閉鎖。別の学級に感染が広がれば学年閉鎖とし、複数学年に及んだ際は休校となる。
すでに一部が始業している東京都立校は9月1日から全ての学校で2学期がスタートする。ただ、都教委には、保護者から「夏休みを延長した方がいい」との声も寄せられており、校内で複数の感染者が出れば、「国が示した基準も参考にしながら保健所と相談して判断する」(都教委)。
横浜市立小中高では9月1~13日まで分散登校と短縮授業を実施する。1クラスを2つのグループに分けて隔日登校とし、自宅待機となる子供にはオンライン授業などを行う方針だ。
再開する学校でも校内活動は大きく制限される。埼玉県立校では、部活動は原則として平日のみ週2回。宿泊を伴う修学旅行は中止か延期にするほか、文化祭などの行事も生徒と教職員のみで行うことになる。
臨時休校も目立つ。千葉県では習志野市と鴨川市が9月1日に予定していた市立小中の始業を6日に延期。野田市立小中は9月2~12日まで休校にする。