緊急事態宣言再延長の公算 指標見直し12日以降に先送り

    新型コロナウイルスの感染拡大をめぐっては収束が見通せず、約2週間後に迫った9月12日の緊急事態宣言の期限は再延長される公算が大きくなった。政府が宣言の適用や解除の目安にしている感染状況を示すステージ別指標の見直しについては、専門家の間に慎重論が根強く、12日以降に先送りされる見通しだ。病床拡充にもなお時間がかかりそうだ。政府は来週、対策本部を開き、対応を決める。(坂井広志)

    田村憲久厚労相(春名中撮影)
    田村憲久厚労相(春名中撮影)

    内閣官房のステージ別指標の資料によると、21都道府県に上る宣言地域の直近1週間の10万人あたりの新規感染者数(今月29日時点)はいずれもステージ4(爆発的感染拡大、25人以上)。沖縄県は306人と突出して高く、次いで大阪府198人、東京都190人などとなっている。

    田村憲久厚生労働相は29日のNHK番組で「新規感染者の基準を見ると、東京一つとっても(1日あたり)500人未満にならないと解除できない。現状を考えるとかなり難しい」と語っており、現在の指標のままでは当面解除できそうにない。

    東京都が30日に発表した新規感染者数は1915人で8日連続、前の週の同じ曜日を下回ったが、西村康稔経済再生担当相は30日のTBS番組で「お盆に都心は人が減り通勤客も減った。その反映が今出ている」と分析。田村氏はNHK番組で「学校が始まり人の行動が変わると感染はまた広がる。9月も含めて厳しい状況が続く」と述べた。

    加えて、秋に向けて一時的に感染者数が減ったとしても、冬は夏同様に換気をあまりせずにエアコンなどをつけるケースが相次ぐとみられ、底を打つ前に全国的に感染が拡大する可能性がある。

    そこで政府は、指標の見直しを検討。重症化予防に効果があるワクチン接種が進んでいることを踏まえ、菅義偉(すが・よしひで)首相は17日の記者会見で「医療提供体制の負荷に着目し、病床使用率やワクチン接種の状況、重症者数などを分析した上で対応する」と語っていた。

    ただ、この時期の見直しは「解除するために基準を変える」と受け取られかねず、厚労省幹部は専門家から「解除できないから(基準の)数字をこう変えましょうという議論をされてもついていけない」と言われたという。閣僚は「指標を変えたいが、専門家が作ってくれない」と漏らす。

    もっとも病床使用率でも21都道府県中、20都府県がステージ4(50%以上)で、病床使用率を重んじるにしても、基準を緩和するか、大幅に病床数を増やさない限り、解除は難しい。厚労省が30日に発表した全国の重症者数は2075人で18日連続で過去最多を更新した。病床のニーズは高まるばかりとなっている。


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