話の肖像画

    評論家・石平(29)大切な息子に伝えたい「日本人の精神」

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    《3人家族。2011(平成23)年に結婚した妻との間に小学生となる息子がいる。『日本の心をつくった12人』(PHP研究所、令和2年)は、大切な息子に日本人の精神を伝えたくて書いた》

    妻は大阪出身で、ある保守系国会議員の方のパーティーで知り合いました。今や立派な?〝教育ママ〟になっています。

    2012(平成24)年生まれの息子とは仲良しですよ。時間があれば、僕と一緒にいろんなところへ出かけるし、何よりも「立派な日本人」になってほしいと願っています。それは、礼儀をわきまえ、美しい心を持ち、大きくなれば、この国(日本)のために力を尽くすことができる人間ですね。

    ただし、それだけでは十分でありません。日本人が古来大切にしてきた精神や美徳、価値観といったものをしっかりと学び、身につけてもらいたい。僕自身が1988(昭和63)年に来日して以来、それに触れて感動したように、息子にも伝えたい。そう考えて本を書いたのです。

    本の中で取り上げた「日本人」は僕が大好きな西郷隆盛(南洲(なんしゅう))をはじめ、楠木正成(くすのき・まさしげ)、源義経、徳川家康、東郷平八郎らです。今の日本人、特に政治家や官僚ほど、こうした先人の素晴らしい精神を忘れてしまっているのではないか、と残念に思えてなりません。

    《中国には、母親と妹が住んでいる。だが、習近平政権になって以来、身の危険を感じて中国へ行けなくなった》

    結婚する前に、今の妻を連れて中国に行ったのが最後ですね。日本の婚約者をどうしても母に会わせたかったのです。

    胡錦濤(こ・きんとう)政権時代は、どんな動きをしてくるのか、ある程度は予測ができました。ところが、習近平政権になってからは、何をするのか、どんな手を使ってくるのか、分かりません。いきなり、罪もない人間を拘束することも平気でやる。だから、習近平政権になってからは一度も中国へ行っていません。さらにいえば、香港にも行けなくなりました。新たに施行された国家安全維持法に僕は明らかに違反していますからね(苦笑)。

    とはいえ、母と会えなくなったわけでもないのです。数年前に第三国で落ち合い、息子の顔を初めて母に見せました。母は僕のやってきたことにずっと反対しませんでした。日本国籍をとったときでさえもです。政治的なことにはかかわらないし、僕のせいで、身の危険が及ぶことなどないと思うのですが…。

    僕が住む日本へ来てもらってもいいのですが、やはり、母が中国へ戻ったときに当局から追及を受ける可能性は完全には否定できませんからね。

    《どんな状況になろうとも、中国への厳しい批判をやめたり、筆を曲げたりするつもりは、まったくない》

    環球時報(中国共産党機関紙「人民日報」傘下の官製メディア)だったか、2度ほど、名指しで非難されたことがあります。「石平の書くことはウソだ」って(苦笑)。

    身の危険を感じたことはないですね。日本にいる限り、自由と民主主義に守られて安全だと信じています。執筆・言論活動についても、それをやっていることが、むしろ安全につながると思っています。僕は誰に対しても遠慮をする必要も、そのつもりもない。これからも、です。(聞き手 喜多由浩)

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