ECB、量的緩和縮小へ ユーロ圏景気改善受け 資産購入減額を決定

    【ロンドン=板東和正】欧州中央銀行(ECB)は9日、ユーロ圏の金融政策を話し合う理事会を開き、新型コロナウイルス対策として国債などの資産を購入するペースを減速する方針を決定した。ユーロ圏経済が回復傾向を示す状況を考慮し、金融政策の正常化を進める最初の一歩を踏み出した。

    欧州中央銀行(ECB)本部=ドイツ・フランクフルト(ロイター)
    欧州中央銀行(ECB)本部=ドイツ・フランクフルト(ロイター)

    コロナ対策で実施している資産購入は通常の量的緩和策とは別枠で、2020年3月に導入した。金利の上昇を抑え、個人や企業の資金調達を支援する役割がある。総額で1兆8500億ユーロ(約240兆円)に上り少なくとも22年3月まで続ける方針を掲げてきた。

    9日の理事会では、現在はおおむね月800億ユーロとなっている購入のペースを減速する方針が決まった。「これまでの2四半期と比べて適度に低いペース」で行うという。買い取り自体は続ける。感染力が強いとされる新型コロナのデルタ株の感染状況を注視し、継続期間を慎重に判断するとみられる。

    買い取りペースは3カ月おきに見直す取り決めとなっているが、6月の見直し時期ではユーロ高が進んでいた状況などを踏まえ、減速しなかった。その後、新型コロナのワクチン接種拡大で経済活動が再開した影響で欧州経済の回復が進み、量的金融緩和の縮小を決断した。

    ユーロ圏19カ国の21年4~6月期の実質域内総生産(GDP)は前期比2・2%増で、コロナ禍で低迷した前年同期と比べると14・3%増と大きく伸びた。物価の上昇率も著しく、8月はECBが目標とする「2%」を上回り、3・0%に達した。欧州連合(EU)欧州委員会は7月に発表した夏季経済見通しで、ユーロ圏19カ国の21年の実質域内総生産(GDP)は前年比4・8%増になると予測した。

    米国が緩和縮小を始める方針を示したことも今回の決断の〝追い風〟となったもようだ。米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長は8月、順調な改善が続けば量的金融緩和策を「年内に縮小開始するのが適切」と述べていた。


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