今やLINEは、友達とのメッセージのやり取りや通話などが無料で行える便利さから、多くの人に活用されている。
4年ほど前、妻が他界し独り生活を余儀なくされた。今は76歳の独居老人である。嫁いだ2人の娘は独居の私が心配で仕方ないらしい。
妻存命中は4人でLINEしコミュニケーションを図っていた。正確に言えばその恩恵にあずかっていたのは妻と娘の3人で、スマートフォンを使いこなせない私にはやや荷が重く、その輪の中に入っていたとは言い難い。
そんな私も妻が逝った後、娘たちに諭され朝夕に連絡し合うことになり、以来朝起きたときは「おはよう」。寝る前は「おやすみ」とLINEしている。忘れるときもあり、後でお叱りを受けることがある。
娘たちからすれば、寝込んでいないか、生きているか、確認したいのだろう。
私からすれば娘たち、そして孫たちが日々元気に暮らしているかが分かればよい。
こんなときは、さだまさしさんが歌う「元気でいるか 街には慣れたか…」という『案山子(かかし)』を思い出す。
「おはよう!」と私がLINEすると素早く既読の2文字がつく。なかなかつかないときもある。既読がすぐつくと元気でやっているようだと安心し、なかなかつかないと何かあったのかなと気をもむ。
娘たちも私の既読がついた、なかなかつかないで同じ思いをしているらしい。
「おはよう」「おやすみ」のたった4文字で互いの気持ちが通じ合い、既読のたった2文字が私と娘たちの心を結んでくれる。
橋本一(76) 埼玉県所沢市