• 日経平均25868.75-553.30
  • ドル円144.50144.53

学びの可能性広げるタブレット 東大阪市立布施中学校夜間学級㊤

「今日はタブレットを使って漢字の勉強をします」

タブレットを使い授業。「これ、楽しい!」「難しいなあ」。教室に活気があふれる(恵守乾撮影)
タブレットを使い授業。「これ、楽しい!」「難しいなあ」。教室に活気があふれる(恵守乾撮影)

大阪府東大阪市立布施中学校夜間学級のD組教室。担任の水谷ちとせ先生(40)がそう告げると、先生よりずっと年上の生徒たちがアプリを起動させる。すんなりできる人もいるが、手間取る人も多く、あちこちの席から「先生」と助けを求める声があがった。

タブレットの画面に指で漢字を書いていく生徒たちの表情は真剣そのもの。書き順を色で示し、読み方も学べるアプリに、藤田義和さん(73)は「これ、いいよ。わかりやすい」と声を弾ませ、韓国籍の金英子さん(77)も「勉強がはかどる。最高。この年でいっぱい学べて、めっちゃ幸せ」と笑顔を見せる。

生徒たちの思いがつまった「夜間中学生の歌」(恵守乾撮影)
生徒たちの思いがつまった「夜間中学生の歌」(恵守乾撮影)

「筆順通りに書けば漢字の形がきれいに決まるので、みんな筆順をすごく気にする」と水谷先生。これまで黒板に一画ずつ書いて説明しており、当初は生徒たちがタブレットを使いこなせるか心配だった。だが、自分の手元で繰り返し確認できるタブレットは予想以上に好評で、手応えを感じているという。

タブレットは、すべての小中学生に一人1台のデジタル端末を整備する国の「GIGAスクール構想」に基づくもので、もちろん夜間中学生にも適用される。新型コロナウイルス禍で令和5年度までとしていた整備計画が2年度に前倒しされ、同校も今年4月から授業で活用。ローマ字学習などのアプリもあり、使い方次第で学びの可能性が広がるとの期待がある。


東大阪市の夜間中学再編整備計画で、同校は一昨年4月に現在地に移転した。平屋のプレハブ校舎が建てられ、生徒たちは新しい教室で学ぶ。ただ職員室、保健室、多目的室を除く一般教室は4つだけ。生徒の国籍は8カ国に及び、日本語の習熟度別に設けた4クラスですべて埋まる。「コロナが不安で休む生徒もいる。密を避けるために、もう少し余裕がほしいが…。手狭なのがハード面の悩み」と今春着任した松井良頼教頭(45)は言う。


ある日の多目的室。好きな言葉や誰かに伝えたい言葉を、それぞれの母語で書く授業が行われた。生徒たちは、筆や竹、キッチンペーパーなどさまざまな〝筆記具〟に墨をつけて書いていく。

「お母さん」。ネパール人の20代の男性は「私の心にいつもいる大切な人」として、この言葉を選んだという。金英子さんはハングルで「毎日幸せ」と書いた。「毎日学校に来るのがどれだけ幸せか。毎日感謝している」と話す。

アラビア語の「希望」。ペルシャ語の「生命」。日本語の「ありがとう」…。「それぞれが大切にしている言葉や、なぜその言葉を選んだのかを知ることは、その人のことを知り、その人の国や文化に触れるきっかけになる」と安野勝美先生(68)。年齢も国籍もさまざまな生徒たちが集う夜間中学で生まれた授業だ。


一歩踏み出せる働きかけを

平成28年に教育機会確保法が成立し、不登校などで十分な教育を受けないまま形式的に中学校を卒業した人も、夜間中学に入学できるようになった。不登校生の増加傾向が続く中で「学び直し」の場としての役割が期待される。同校にも毎年入学希望者がいるが、中学卒業から長い歳月を経たケースが多いという。

「法律はつくっても、それに見合うシステムになっていない」と安野先生は指摘する。以前より夜間中学の認知度は高まっているが、まだまだ存在を知らない人は多い。中学校を卒業したばかりの生徒、卒業して少し時間がたった生徒が、はたして夜間中学にアプローチできるのか。

「ニーズはあるのに働きかけがないのが現状で、困っている生徒が一歩を踏み出せるように支援するシステムが必要だ」と訴える。


実際の紙面はこちら

「夜間中学」に関する体験談やご意見、ご感想を募集しています。

住所、氏名、年齢、電話番号を明記していただき、郵送の場合は〒556-8661(住所不要)産経新聞大阪社会部「夜間中学取材班」、FAXは06・6633・9740、メールはyachu@sankei.co.jpまでお送りください。


Recommend

Biz Plus

Recommend

求人情報サイト Biz x Job(ビズジョブ)

求人情報サイト Biz x Job(ビズジョブ)