三菱電機は1日、鉄道車両用機器などの検査不正を受けて、柵山正樹会長が同日付で辞任したと発表した。不正を防げなかった責任を取る。経団連副会長も退任した。杉山武史前社長も7月に引責辞任しており、両トップが辞任する事態となった。外部有識者による調査委員会は報告書を同日公表。再発防止に向け「従業員が安心して声を上げることができる企業風土を構築すべきだ」と改革を提言した。
調査委は不正の原因について「『品質に実質的に問題がなければよい』という正当化が行われていた」と指摘。工場単位で「内向きな組織風土」があり、本社と距離があったことも挙げた。
報告書は名古屋製作所可児工場(岐阜県可児市)、長崎製作所(長崎県時津町)など5拠点の不正を認定した。可児工場では新たに電気制御機器の製造で、米国認証に登録したものと異なる材料を使った不正が判明した。長崎製作所でも鉄道車両の冷房能力が基準に満たないのに合格と判定し、52社に1万7121台を出荷したことなどが明らかになった。
調査委の委員長を務める木目田裕弁護士(西村あさひ法律事務所)は同日、東京都内の三菱電機本社で会見し、「経営層はもっと深く現場に関与していくべきだった」と述べた。
三菱電機は同日、漆間啓社長直結の品質改革推進本部を新設したと発表した。
木目田氏に続き会見した柵山氏は「多大なるご心配、ご迷惑をお掛けしていることを深くおわびする」と陳謝。「最も大きな問題は経営層と現場の断絶だった。経営に携わる者として心から責任を痛感している」と述べた。杉山氏と同じ日に辞任したかったが、体制の立て直しのため慰留されたと説明。自らの検査不正への関与は否定した。