【朝晴れエッセー】がさがさの手・10月8日

    街中で手を繫(つな)いで歩く親子を見ると、ふと思うことがある。そういえば、小さい頃お母さんと手を繫いだ記憶、あんまりないなぁ。

    思い返せば母の手はいつも何かで塞がっていた。

    持ち手が手に食い込むほどパンパンに膨らんだレジ袋、保育所で使う私と妹のお昼寝用の布団、自分のカバン…。母の手は正直すべすべしたきれいな手ではなかった。いつもがさがさしていた。

    特に冬になると乾燥で割れて血が出ていて、がさがさというよりぼろぼろだった。小さい頃は、「お母さんの手、がさがさやん」と思っていた。

    母は今、私たち3人を育てながら、週5日の勤務に加えて月に1、2回の当直をこなす。ご飯だけはちゃんとしたものを食べさせてあげたいと、母の帰りが遅い日は必ずご飯の作り置きをしてくれる。

    洗い物をする手だから冬は乾燥してぼろぼろになるのも無理はない。今はがさがさの手を誇りに思っている。

    夏でも、母の手はぼろぼろになっていた。

    「もう手が消毒のアルコールでぼろぼろやなぁ。もう水仕事するのも嫌になるなぁ」と母は絆創膏だらけの手を見て苦笑しながら言う。医療従事者である母にここまでコロナの影響が及んでいるとは。

    どうかお願いです。一日でも早くコロナが収束して、早く母の手がきれいになりますように。

    中村つかさ 17 大阪府八尾市


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