コロナ感染者急減「なぜ?」 進む接種・外出自粛・気候変化…

    新規感染者数が過去最多となった新型コロナウイルス流行の第5波が収束に向かっている。減少の理由について、専門家は「感染者の減少要因が増加要因を上回った」と解説。普段会わない人との接触機会が増える夏休みが終わったほか、ワクチン接種の進展や人流の減少など複数の要因が影響したとの見方で分析を進めている。第6波を低く抑えるには、第5波の教訓から得られた「増加要因」の回避行動が必要になる。

    「今回、本当に若者で増えて若者で減った」

    歩行者天国が実施されている東京・銀座を歩く人たち=9日午後、東京都中央区(佐藤徳昭撮影)
    歩行者天国が実施されている東京・銀座を歩く人たち=9日午後、東京都中央区(佐藤徳昭撮影)

    厚生労働省に新型コロナ対策を助言する専門家組織の座長、脇田隆字(わきた・たかじ)・国立感染症研究所長は6日の会合後、第5波の状況をこのように評した。

    これまでは若年層に感染が急拡大した後、流行の後半で病院や高齢者施設などでの大規模なクラスター(感染者集団)が発生していたが、第5波ではこれらのクラスターが激減。医療従事者や高齢者のワクチン接種によって感染予防効果が発揮されたとみられている。

    第5波では強い感染力をもつインド由来の変異株「デルタ株」が猛威をふるった。専門家は夏休みに向けた7月22日からの4連休などに、ワクチン接種を済ませていない現役世代の社会活動が活発化したと指摘。全国的に気温が30度を超える日が続き、屋内で人が集まる機会が増えたことを急拡大の理由に挙げる。冷房のため、換気が不十分で、感染しやすい状況が生まれたという見方もある。

    この7月下旬には、国内の新規感染者数は多い日でも5千人程度だったが、7月末になると約1万人にまで急増。8月20日には2万5851人に及んだ。

    一方、感染急拡大の局面では、「病床の逼迫(ひっぱく)」や「自宅療養中の死亡」「40、50代の重症化」「感染した妊婦の自宅出産」などの実態が明らかになり、連日メディアなどで伝えられた。こうした危機的な状況を身近に感じることで、感染への警戒感が高まり、心理面から一人一人の感染予防対策が強化された可能性が高い。

    このほか、異例の「お盆の長雨」が、外出控えにつながり、結果的に不特定多数との接触機会が減る要因になったとみられている。

    緊急事態宣言のもとで、リスク要因とされてきた繁華街での行動も一定程度抑制された。

    東京都医学総合研究所は、緊急事態宣言ごとの都内の繁華街の滞留人口を比較すると、4回目の今回は昨年4月からの1回目と比べると1・5倍程度だったが、今年1月からの2回目、4月からの3回目より少なかったと分析する。

    現役世代のワクチン接種も進んだ。ワクチンを2回接種し、感染を防ぐための抗体をつくるのに必要な2週間を経過した後でも感染してしまう「ブレークスルー感染」もあるが、未接種と比べれば大幅に少ない。暑さも収まり、徐々に窓を開けて換気がしやすい気候になったことも感染を防ぐ一助になったとみられる。

    第5波の感染状況は落ち着きをみせているが、季節は感染症が流行しやすい冬に向かう。年末年始には忘年会や新年会をはじめ、人が集まる行事もあり、感染の再拡大も懸念される。

    脇田氏は専門家の間でも感染者数が急減した理由の解明には至っておらず、分析には時間を要すると説明。その上で、「それぞれの要素がどの程度重みがあるのか、どれが因果関係があるものなのか、直接の原因になっていたものがあるのか、それぞれの要素にどの程度の寄与度があるのか、について分析していくべきだと考えている」と話している。


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