マイナンバーカードが健康保険証として利用できる仕組みが20日から、全国の医療機関や薬局で順次導入される。さまざまな行政手続きをカード1枚でできるようにする政府方針の一環で、普及の後押しとなることが期待される。ただ、カードを所持することによるメリットは依然少なく、個人情報を政府に監視されるのではとの不安も根強い。
/cloudfront-ap-northeast-1.images.arcpublishing.com/sankei/XE4RMGKILBNPXJNSIK7Z6WYYZY.jpg)
「保険証とマイナンバーカードの一体化で、カードを持ってよかったというメリットを実感してもらえるのではないか」
牧島かれんデジタル相は今月10日、東京都内の病院でこう強調した。この日は後藤茂之厚生労働相とともに、マイナカードを保険証として利用できるようにするための登録手続きを実施。病院に設置された顔認証機能付きのカード読み取り機にカードを置いて、タッチパネルを操作すると、数分で手続きが完了した。
本格運用後は、患者の同意の下、医療機関は過去の処方薬や生活習慣病など特定健診の記録を見られるようになり、他の診療科での治療が必要かといった判断の材料にもできるという。
だが、読み取り機の設置やシステム改修など、マイナカードの保険証利用に向けた準備は遅れた。10日時点で医療機関や薬局の申込件数は約56%に達したが、医療現場は新型コロナウイルスの治療に忙殺されている上、半導体不足で読み取り機の生産が遅れたことも重なり、実際に準備が整ったのは約8%にとどまる。
また、利用者にはマイナカードで保険証を代用できるという以外のメリットは開始時には見当たらず、カードの普及につながるかは疑問が残る。プライバシーの侵害につながる恐れがある医療情報の統合が進むことへの懸念もつきまとうだけに、政府や医療機関には慎重な運用が求められる。