書評

『優しい語り手 ノーベル文学賞記念講演』オルガ・トカルチュク著、小椋彩・久山宏一訳

『優しい語り手 ノーベル文学賞記念講演』オルガ・トカルチュク著、小椋彩・久山宏一訳(岩波書店・1980円)

小説『逃亡派』などで知られ、2018年(19年に一括発表)のノーベル文学賞を受けたポーランドの女性作家による2つの講演を収める。表題のノーベル賞受賞記念講演はとりわけ興味深い。

大量の情報が氾濫する現代のネット社会は利便性をもたらすだけでなく、互いを受け入れない排他性をも生む。そう危惧する作家は、閉じられた個人の「一人称」ではない「第四人称」の語りに希望を見いだす。全知で、想像力あふれる優しい語り手として。「文学は自分以外の存在への、まさに優しさの上に建てられています」。言葉の端々に、文学の持つ力への信頼がにじむ。(岩波書店・1980円)


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