バディ(相棒)物とは、立場や考え方の違うふたりが、何らかの理由でコンビを組み、事件や騒動を通じて、互いを理解していく作品のことである。大沢在昌の新刊は、そのバディ物の、あらたなる収穫だ。
あがり症だが、外国人相手だとそれほど問題なく、フリーの観光ガイドをしている佐抜克郎(さぬき・かつろう)は、外務省関係者の阪東から声をかけられた。13年前の軍事クーデターにより、母親とアメリカを経て日本に逃れてきた、旧ベサール王国の16歳の王子、アリョシャ・ケントを捜してほしいというのだ。克郎がベサール語を話せることから、依頼してきたらしい。
そんな克郎の相棒になるのが、やはり阪東に雇われた元女子プロレスラーのヒナである。母親がベサール人で、彼女も16歳までベサールで暮らしていた。実はヒナのファンだった克郎。喜んで一緒にケントの行方を追い、千葉の木更津近くにある、「アジア団地」に行き着いた。だがそこは、多国籍の人々が暮らす自治区のようなものだ。「アジア団地」に入り込んだ克郎とヒナは、いつしか国家間の思惑が渦巻く、争いに巻き込まれていく。
物語は前半と後半に、大きく分けることができるだろう。前半はケントの行方を捜す、克郎とヒナの追跡行だ。日本に住むベサール人を当たり、しだいにケントに迫っていく展開が滑らかで、すぐに物語の世界に引き込まれる。そして後半になると、ケントの争奪戦になる。日本・中国・アメリカの思惑に、ベサールを民主化しようとするレジスタンスまで加わり、ストーリーは二転三転。その渦中で、ケントを政治の駒としか見ない国と人に、克郎とヒナは怒りを抱く。だから、自分たちも捨て駒だと承知の上で、ケントの希望をかなえようとするのである。国家の思惑を粉砕する、ふたりの活躍が痛快だ。
また、「アジア団地」の設定にも注目したい。日本の一角に根を張った、多国籍の人々が暮らす場所がある。このような〝現実〟を、どう受け入れればいいのか。作者は、克郎とヒナの間に生まれた絆を通じて、日本人と外国人がバディになれる可能性を、真摯(しんし)に提示しているのである。
(角川書店・1980円)































