新型コロナウイルス禍で在宅勤務などのテレワークが浸透する中で、東京都心の住宅コストの上昇が続いている。東京23区の大型家族向け賃貸マンションの平均家賃は約34万円で、コロナ禍後も堅調に推移。テレワークによる出勤頻度の減少にもかかわらず、「都心人気」に陰りはない。また、23区の新築マンション販売価格は約8700万円にも達しており、まさに高根の花だ。一方では23区からの人口流出傾向もあるが、高い住宅コストを払える世帯でなければ暮らせない実態の表れともいえそうだ。
平均家賃33万7425円
「23区の大型家族向けの賃貸マンションの家賃は上昇傾向にある」。不動産情報サイトを運営するアットホームのグループ会社、アットホームラボの磐前淳子データマーケティング部部長は、コロナ禍後の家賃動向をこう解説する。
アットホームが21日に発表した調査結果によると、9月の23区の大型家族向けマンション(70平方メートル超)の平均家賃は33万7425円。国内での感染拡大が始まる直前の2020年1月の水準と比べて4.0%高い水準を維持している。
コロナ禍後に普及したテレワークをめぐっては職場から離れた場所に引っ越す動きがイメージされがちだが、不動産市場では広い物件へのニーズの高まりが意識されている。磐前氏は「単身者やカップルが在宅勤務用に1部屋増やしたくなり、70平方メートル超の物件を求めるケースがある」と話す。
求める住まいは「近くて広い」
コロナ禍が住宅に関する意識に与えた変化は別の調査でも明らかだ。
不動産情報サイト「マンションレビュー」を運営するワンノブアカインドが5月に実施した会員向けの調査では、回答者の56%が新型コロナ禍での生活の変化で住みかえや物件の購入・売却を検討したと回答。コロナ禍での住まいの悩みについて尋ねると、「部屋が狭い」「部屋数が足りない」といった住環境関連の回答が最も多かったという。
ただ、在宅勤務が普及したとはいえ、週に数日の出勤があるケースが一般的。子供がいれば通学時間も考慮せねばならず、「完全に生活圏を変えて郊外に住むことは難しい」(ワンノブアカインド)。結果としてコロナ禍後の理想の住まいは、職場に近くて、しかも部屋数が多い物件となってしまうようだ。
分譲マンションに関しても、23区人気は根強い。不動産経済研究所が18日発表した21年度上半期(4~9月)の新築マンションの1戸当たり平均価格は23区で8686万円。前年同期比で17.0%増という高騰ぶりだった。契約率も7割を超えており、研究所の担当者は「今年は値段が上がっても売れている。世帯年収で1000万円を超えるようなパワーカップルの購入意欲が強い」と話す。