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【鉄道新潮流】地震被害推定 列車乗客の閉じ込め回避 鉄道総研、揺れ大きさ500メートル間隔で 再開判断しやすく

自然災害にどう対処するかは日本の鉄道事業者が抱える大きな課題だ。鉄道総合技術研究所(東京都国分寺市)が確立した地震時に細かい範囲で揺れの大きさを推定できる技術は、安全な区間を特定しやすく、移動可能な列車をすぐに動かす判断の一助となる。それは乗客が閉じ込められる時間の短縮につながる。また、ゲリラ豪雨による雨量の予測情報を利用し、列車の最適な停車位置を導き出すシステムも開発され、近く実用化される。

「DISER(ダイザー)」はパソコンやタブレットなどで閲覧できる。揺れの大きさが色別に示される。画面上の路線は仮想路線
「DISER(ダイザー)」はパソコンやタブレットなどで閲覧できる。揺れの大きさが色別に示される。画面上の路線は仮想路線

「DISER(ダイザー)を活用したシステムに大阪北部地震のデータを適用したら、乗客が駅間降車した列車の55%は、すぐに最寄り駅まで動かせる地域にいたとの結論が出た」

DISERとは鉄道総研の「鉄道地震被害推定情報配信システム」を指す。6月に導入したJR西日本の担当者は「閉じ込め」回避に役立つことを期待する。

最大震度6弱を観測した平成30年の大阪北部地震では、駅間で乗客を降車させた列車は153本(計14万人)に上り、降車までに最大6時間近くを要した。

同社は当時、線路沿いに40キロ間隔で設置した地震計が一つでも規制値に達すると、広範囲で運行中の列車を停止させ、近くの地震計で規定の計測震度を下回ったことが確認された列車から順次、最寄り駅への徐行運転を認めていた。同じ40キロ区間の中でも揺れの大きさに濃淡は出るが、周囲の点検など一律に同じ対応を取らざるを得なかった。

令和元年に配信が始まったDISERは、揺れの大きさを500メートルごとに推定できる。地震発生直後に公開される防災科学技術研究所の観測網「K-NET」のデータに、鉄道総研が作成した地盤情報を加味して数値を導き出し、画面の地図上に色別で表示する。路線に沿った揺れの大きさ、橋梁(きょうりょう)などの被害程度を予測したグラフも配信する。

情報は登録した事業者に配信され、スマートフォンでも閲覧可能。JR西はDISERを活用した新システムで、乗務員が指令所からの指示を待つことなく、列車の移動再開を独自に判断できるよう内規を変えた。

鉄道総研によると、地震発生から情報配信まで所要時間は平均約8分で、地震が大きいほど長くなる。震度の観測値と推定値の誤差は平均0.6程度という。鉄道総研鉄道地震工学研究センターの山本俊六研究センター長は「点検箇所の絞り込みや優先順位付けがしやすくなれば」と話す。

水害対策では、鉄道総研などがゲリラ豪雨時に刻々と変わる浸水予測などを示す「リアルタイムハザードマップ」を開発した。

地上雨量の予測情報と作成した河川流域の地形データを重ね合わせ、浸水範囲などを計算する。1.5時間先の予測を10分間隔で更新。列車が予想浸水範囲を回避できる停止位置と、最寄りの避難場所までの経路も算出する。

鉄道総研の太田直之防災技術研究部長は「既に部分的な技術については実用可能な状態」と話している。

(福田涼太郎)

鉄道総研 渡辺郁夫理事長インタビュー 自然災害からの回復力アップ重要

鉄道は開業以来、地震、降雨など自然が原因の被害を受けてきた。大きなテーマである防災や復旧に取り組む鉄道総合技術研究所の渡辺郁夫理事長に自然災害対策について話を聞いた。

--鉄道総合技術研究所とはどのような組織か

「国鉄が行っていた技術開発を引き継ぐ財団法人として昭和61年に設立された。現在は公益財団法人として、研究成果は一般に広く公表している。鉄道に関する幅広い分野を研究しており、最近では脱炭素に向けた燃料電池で動く車両なども手掛けている。国鉄時代には導入当初の新幹線について、車両などの研究開発を担い、所在地の町名は『ひかり号』にちなんで『光町』となっている」

--懸念が高まっている自然災害対策にどう臨む

「運行の安全性や災害に対する強靱(きょうじん)化、被害を防げなかった場合の回復力向上は非常に重要で力を入れるべきだ。5年ごとの基本計画で掲げる活動基本方針の最初に自然災害対策の項目を挙げている」

--鉄道地震被害推定情報配信システム(DISER、ダイザー)の普及状況、今後の見通しは

「DISERを導入しているのは民鉄含め4社。一部を除いて今はまだ『試み』として使ってもらっている状況だ。地震発生後の点検にかかる負担が軽減されると思うし、実績を積んで『確かな精度で使える』となれば、もっと使ってもらえるだろう」

わたなべ・いくお 東北大大学院工学研究科修了。昭和57年、日本国有鉄道入社。59年から鉄道技術研究所(現鉄道総合技術研究所)。信号通信技術研究部長、研究開発推進室長などを経て、平成30年に専務理事。令和2年6月から現職。64歳。秋田県出身。

鉄道技術展の開催概要

▷開催期間:11月24日(水)~26日(金)。午前10時から午後5時まで。

▷場所:幕張メッセ(千葉市美浜区)

▷主催:産経新聞社

▷後援:国土交通省、経済産業省、文部科学省、千葉県、千葉市など

【第7回鉄道技術展】公式ホームページ(http://www.mtij.jp/

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