朝晴れエッセー

    MORIOKA・11月11日

    週末の午後、夫が何かゴソゴソしている。独身時代にそろえたオーディオ類を処分するのだという。

    アンプ、スピーカー、チューナーなどなど、リサイクル店へ持ち込む前の動作チェック中。

    「じゃあこの曲かけて~」

    『緑の町に舞い降りて』。昔から好きな曲、歌詞の景色が心に浮かび優しい気持ちになる。子供たちへの子守歌にも歌った。

    なぜか突然「私の出棺のときはこの曲がいいな」と言葉が出た。

    家族皆知っている曲だからきっと覚えていてくれるだろう。こんな頼み事は元気なときに伝えておくに限る。終活をひとつしたような気分になった。

    オーディオたちは次の持ち主探しの旅に出た。「使わずに眠らせておくよりずっといいよ」。夫はこの代金を、最近の趣味であるランニングのグッズ購入資金に充てるそうだ。

    ところで、この曲の舞台は盛岡。ユーミンはMORIOKAの響きがロシア語みたいだと歌っている。随分前の曲だから町の景色も様変わりしているかもしれないが、ぜひ一度夫と2人で訪ねてみたい。

    「お母さん、この曲大好きだったけど結局行かなかったね」と見送られるのか、旅先での写真が飾られるのか?

    ちょっと楽しくなってきた。

    岩崎恵子 55 新潟県糸魚川市


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