企業業績、遠い完全復調 半導体不足・資源高が壁に

    東京証券取引所1部上場企業の令和3年9月中間連結決算は、新型コロナウイルス禍で増えた「巣ごもり需要」や円安効果を取り込んだ製造業を中心に過去最高益が相次いだ。ただ、原油などの資源高や半導体不足といったリスクを抱え、先行きは楽観できない。コロナ禍の影響で売り上げが激減する鉄道や航空業の経営環境は依然厳しく、コロナ禍前への完全復調はまだ遠い状況だ。

    中間期は、PCR検査の徹底やワクチン接種の拡大により、コロナ禍からの経済活動の再開で先行した中国や欧米の景気回復を取り込んだ企業の業績回復が際立っている。コンテナ輸送の需給逼迫(ひっぱく)に伴う運賃高騰の恩恵を受けた海運業の利益は、「想像していないほど高い水準」(日本郵船の丸山徹執行役員)を確保。日本郵船など大手3社の最終利益はそろって過去最高となった。

    電気機械や自動車の業績も堅調だ。コロナ禍の「巣ごもり需要」を取り込み、音楽配信サービスや家庭用ゲーム機の売り上げが好調なソニーグループは売上高と営業利益で過去最高を記録。新車需要の拡大を受けトヨタ自動車は売上高と営業利益、最終利益がいずれも過去最高を更新した。

    だが、輸出産業である自動車の業績改善は円安効果で利益が押し上げられた面も大きく、トヨタの近健太最高財務責任者(CFO)は「円安の影響を除けば、(通期の業績予想は)実質は下方修正だ」と打ち明ける。足元では半導体の供給不足を受けて自動車各社は減産を強いられており、半導体不足のリスクについては、日立製作所の河村芳彦CFOも「下期は上期よりもはるかに大きく影響が出る」と警戒する。

    原油をはじめ原材料費の高騰も深刻な問題だ。味の素の西井孝明社長は「原燃料価格は最も高かった平成23年に迫る水準で、来期にかけて高止まりする」と指摘。利益確保に向けて各社は商品の値上げで対応する方針を示すが、消費者の買い控えを招く恐れもある。

    一方、国内で今夏に新型コロナの感染者数が急増した影響を受けた鉄道、航空業は業績低迷のトンネルを抜け出せていない。JR東海は「運輸収入の回復が予想より2カ月程度遅れた」(丹羽俊介常務)ことなどを理由に、黒字見込みだった4年3月期の連結最終損益予想を一転して赤字に修正した。

    コロナの国内新規感染者数の急減や医療体制の充実を理由に「下期は航空に追い風の環境だ」(ANAホールディングスの片野坂真哉社長)と期待する向きもあるが、欧州で感染者が再拡大するなどコロナ禍の暗雲が晴れない状況は続く。


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