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【脱炭素最前線】③IHI、日本発の燃焼技術を世界へ アンモニア発電の実験に貢献

石炭火力発電所として、国内最大級の総出力を誇るJERA碧南火力発電所(愛知県碧南市)。6月からここで世界が注視するプロジェクトが始まった。燃料の石炭に、大量のアンモニアを混ぜて燃やす「混焼」の実証実験だ。

アンモニア混焼の実証実験が行われているJERAの碧南火力発電所=愛知県碧南市(同社提供)
アンモニア混焼の実証実験が行われているJERAの碧南火力発電所=愛知県碧南市(同社提供)

石炭は化石燃料の中でも二酸化炭素(CO2)排出量が多く、最新鋭の石炭火力でも液化天然ガス(LNG)火力の約2倍のCO2を排出する。だが、アンモニアは燃焼時にCO2を排出することがなく、石炭に混ぜて利用すれば、既存の設備を生かしながらCO2を削減できる。

今回の実証実験で、JERAは碧南火力4号機で設備を整え、令和6年度にアンモニアを約20%混ぜて約2カ月間燃焼することを目指している。22年以降にはアンモニアだけで発電することも視野に入れている。

鍵を握るのがIHIの燃焼技術だ。アンモニアは燃焼状態が悪いと、大気汚染物質である窒素酸化物(NOⅹ)が発生してしまう。NOⅹを環境基準内に抑え、安定的に燃焼させるため、東北大の小林秀昭教授とも連携。燃焼器内におけるアンモニアの投入場所や空気の流れ方の最適な条件を導き出そうと、さまざまなシミュレーションを行い、相生事業所(兵庫県相生市)で試験を重ねた。

その結果分かったことは、混焼時にアンモニアを石炭よりも先に燃やすと、NOⅹが発生しやすくなることだった。NOⅹは窒素と酸素が結びついて発生するため、アンモニアに含まれる窒素が空気中の酸素と結びついてしまうのだ。

IHIでは石炭が先に燃えるように石炭とアンモニアの投入をミリ秒単位で制御。バーナーには燃料投入だけでなく、燃焼器内の空気を旋回させる機能も持たせた。これにより燃焼器の中にアンモニアがきれいに燃焼するエリアを作り出し、そこにアンモニアを投入することでNOxの低減を図った。実験炉ではアンモニア60%の混焼に成功。アンモニアの100%専焼に向けた開発も進めている。

13日まで英グラスゴーで開催された国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議(COP26)では、石炭火力は気温上昇の「唯一最大の原因」とやり玉に挙がった。最終的に段階的に削減することで合意したが、石炭火力への風当たりは強まるばかりだ。

だが、電源の転換には大規模投資が必要で、発展途上国にとってコスト負担は重い。IHIはバーナーの交換だけでアンモニア発電に転換できるように開発を進めており、戦略技術プロジェクト部の須田俊之主幹は「最小限の投資でCO2を削減するのも、カーボンニュートラル(温室効果ガス排出実質ゼロ)の答えの1つだ」と話す。

すでに東南アジアからはアンモニア発電への問い合わせが増加。マレーシアでは導入に向けた検討も始まっている。

アンモニア発電は日本が世界をリードする。「日本発の技術でカーボンニュートラルを促し、世界の脱炭素化に貢献したい」。IHIの武田孝治執行役員は力を込める。

武田孝治執行役員インタビュー

石炭火力の脱炭素技術として、大量のアンモニアを混ぜて燃やす「混焼」が注目されている。混焼用バーナーを手掛けるIHIの武田孝治執行役員に、脱炭素燃料としてのアンモニアの可能性について聞いた。

――JERAの碧南火力発電所でアンモニア発電の実証実験がスタートした

「10月からアンモニアの小規模利用が始まり、問い合わせが増えている。東南アジアをはじめ、インドや米国からも来ている。石炭火力に依存する東南アジアの国に積極的に提案し、サポートしたい」

――アンモニア関連の事業を拡大している

「工場向けのガスタービンや運搬船、受け入れ基地などの開発も進めており、サプライチェーン(供給網)の構築に力を入れている。まずは碧南火力の実証事業を成功させ、燃料に向いていることを示すことが大事だ」

――アンモニア発電の普及に向けた課題は

「需給の好循環が必要で、これがうまく回れば、値段も下がる。二酸化炭素(CO2)に課金して排出削減を促すカーボンプライシングの導入も急がれる。技術開発のスピードも重要になっている」

――CO2を排出しない燃料には水素もある

「アンモニアは水素よりも液化の手間がかからず、輸送や貯蔵が容易だ。肥料として流通網も確立されており、アンモニアの方が普及は早いと思う」

――アンモニア以外に注力する事業は

「CO2と水素から都市ガスの主成分となるメタンを製造する『メタネーション』に期待している。工場用途もあり、市場拡大が見込まれる」

――脱炭素社会でIHIが貢献できることは

「当社はエネルギーを扱っており、脱炭素社会の実現は使命だ。その1つの答えがアンモニアだ」

■たけだ・こうじ 昭和61年上智大法卒、同年IHI入社。平成29年資源・エネルギー・環境事業領域ボイラSBU長、31年に執行役員資源・エネルギー・環境事業領域副事業領域長兼IHIプラント社長、令和3年から執行役員資源・エネルギー・環境事業領域長。57歳。大阪府出身。


(黄金崎元)


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