バイデン米大統領の政権運営を大きく左右する2022年の中間選挙まで1年を切った。ただ、バイデン氏が昨年の大統領選で掲げた米国の「団結」は進まず、大統領を支える民主党ですら内部の意見対立で政権運営の足を引っ張る状態だ。トランプ前大統領が影響力を維持する共和党も不協和音を抱え、米国は混沌(こんとん)とした政治情勢の中で選挙イヤーを迎えることになる。
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「一部の共和党議員から協力を得た」
バイデン氏は9日、民主党の選挙運動を取り仕切る党全国委員会(DNC)の行事で、総額1兆ドル(約113兆円)規模のインフラ投資法案が一部の共和党議員の賛成票を得て下院で可決できたことに謝意を示した。そして、さらなる経済対策でも協力が必要だと訴えた。
バイデン氏は新型コロナウイルス禍からの経済回復に向けて超党派の融和的な取り組みを呼びかけるが、米国社会の分断を映し出すように民主党と共和党は激しく対立している。
民主党は、連邦議会議事堂乱入事件をめぐるトランプ氏の弾劾裁判で無罪評決が2月に出た後も同氏への追及を継続している。民主党議員が委員長を務める下院特別委員会は今月8日、事件の調査に関してトランプ氏の選対本部長ら6人に召喚状を出した。報道によると、同委が出した召喚状は計25件に達するという。
共和党はバイデン政権が企業に課したワクチン接種の義務化に反発。同党員が知事や州司法長官を務める州や企業が差し止めを求め提訴し、南部ルイジアナ州ニューオーリンズの連邦高裁が6日、「重大な法律、憲法上の問題が疑われる」と一時差し止めを命じた。
歯に衣(きぬ)着せぬ弁舌で、政治に不満を持つ有権者の支持を集めたトランプ氏の人気は今も高く、両党対立はバイデン氏(民主)vsトランプ氏(共和)という構図で注目される。
米エマーソン大は3~4日に実施した世論調査で、「24年の大統領選が今日実施され、候補者がトランプ氏とバイデン氏だった場合、誰に投票するか」との設問を設けた。結果はトランプ氏45%、バイデン氏43%と拮抗(きっこう)し、世論が真っ二つであることを示した。
ただ、深刻なのは両党が抱える構造的な内部対立だ。共和党では、トランプ氏が自身に批判的な同党議員の予備選に刺客を送り込むなどして反トランプ勢力の排除を進めている。議事堂乱入事件をめぐる弾劾訴追決議に賛成した同党10人のうち2人を再選不出馬に追い込んだトランプ氏は10月末、「2人倒した。あと8人だ」と反トランプ勢力の駆逐継続を宣言した。
一方、民主党では、バイデン政権が目玉政策として打ち出したインフラ投資法案に財政規律を重視する同党議員が反発。バイデン氏自らが議員に電話するなど説得に努めたが、計画発表から議会通過まで約7カ月を要した。意見対立で政権運営につまずいたバイデン氏の支持率(政治専門サイト「リアル・クリア・ポリティクス」)は就任当初の55・5%から約42%にまで落ち込んだ。両党が抱える不協和音は政治の先行きを不透明にしている。
「われわれは挙党体制で20年の大統領選を勝利した。(中間選挙に向け)団結を維持しなければいけない」。バイデン氏は民主党議員にこう呼びかけている。
(坂本一之)