都心近郊で増える若年層 自治体の定住者支援が成果 令和2年国勢調査

    30日に確定値が公表された令和2年国勢調査。大都市圏以外での人口減少に拍車がかかる中、各自治体が若年層に定住してもらう試みに力を入れている。都心近郊の市町村は、新型コロナウイルス禍に伴うテレワークの広がりに後押しされ、職場を変えずに自然の中で暮らせる生活をアピール。東京23区内でも、子育て世帯に合わせた住環境の整備を進めている。(桑波田仰太、内田優作)

    自宅のログハウス脇の庭で家庭菜園を楽しむ遠藤拓耶さん(中央)の家族=11月27日午後、埼玉県飯能市(桑波田仰太撮影)
    自宅のログハウス脇の庭で家庭菜園を楽しむ遠藤拓耶さん(中央)の家族=11月27日午後、埼玉県飯能市(桑波田仰太撮影)

    埼玉県南西部の飯能(はんのう)市。遠藤拓耶(たくや)さん(36)は3人の子供を小学校へ送り出すと、約200平方メートルある自宅の庭にキャンプ用の日よけを広げ、イスに腰掛けた。「今日のテレワークは庭でやろう」。おもむろにパソコンを開き、14年間勤める航空機の内装品製造会社の仕事を始めた。

    「飯能(半農)住まい」と名付けられた市の移住者支援制度を利用し、遠藤さん一家が相模原市から移り住んだのは4年前。もともとアウトドア好きで、以前は遠出してキャンプ場に出かけていたが、今は近くに清流や山がある。庭で収穫した野菜を使い、バーベキューを楽しむこともできる。

    車で約10分の西武鉄道飯能駅からは都心の池袋駅まで約40分。週の半分ほどあったテレワークも減り、現在は都内の職場に通うことも増えたが、遠藤さんは「移住後の生活で不満を見つけるほうが難しい」と語る。

    飯能市では転出者が転入者を上回る「転出超」が常態化し、平成26年には将来的に存続できなくなる恐れが高い「消滅可能性都市」の一つに名指しされた。強い危機感を覚えた同市は28年に支援制度を創設し、自宅の建築費など最大400万円の補助を始めた。

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    農業体験や家庭菜園などで土と触れ合える「安心した子育て」を押し出し、通勤や買い物にも「不便すぎない環境」を強調。その結果、令和元年は265人の転入超となり、コロナ禍の昨年も13組41人が制度を利用して移住を決めた。

    市まちづくり推進課の小見山亮さんは「自然が豊かで、都心の通勤圏という強みを最大限いかせている」と手応えを口にする。

    東京最西端の奥多摩町も平成25年度以降、転入者が転出者を上回り、人口の約1割を移住者が占める。賃料が月約2~3万円の「町営若者住宅」や空き家を無料で譲り渡す「0円空き家バンク」などの多様な支援制度が、若年層を呼び寄せることにつながった。

    都心まで電車で2時間ほどかかるが、コロナ禍がむしろ追い風になり、移住希望者の問い合わせは一昨年から2倍以上に増加した。町若者定住推進課の原島賢一さんは「テレワークで田舎暮らしの弱点が補われつつある」と話した。

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    一方、東京23区唯一の消滅可能性都市である豊島区でも、ファミリー層の定住がカギを握っている。人口は増加傾向にあり、今回調査でも30万1599人と前回から1万人以上増加。その陰で、将来的に子育て世代の女性の減少が懸念されている。

    消滅可能性都市を公表した日本創成会議によると、区内の20~39歳の女性は、22年の5万136人から、令和22年には2万4666人まで半減するとの推計が出たという。

    実際に若年女性の声を聞くと、子育て支援の充実を求める声が多かった。区は民間保育施設の誘致に注力し、平成25年度の9カ所から今年度には69カ所まで増加。約270人いた待機児童も、昨年度から2年連続でゼロを達成した。15歳以下の子供を育てる世帯への独自の家賃補助制度も年々利用が増えている。

    一連の対策はファミリー層の〝都心回帰〟を狙った分譲住宅の増加ともかみ合い、今回調査では0~14歳の人口が前回から2663人増えた。高野之夫区長は「ピンチをチャンスに変えるため、子供・子育て施策を充実させたことが、年少人口の増加につながった」と成果を強調した。


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