人手不足でもバイト増やせない飲食店の実情 困窮学生10万円給付は「焼け石に水」

    新型コロナウイルス禍で大打撃を受けた飲食業界で人手不足感が強いにもかかわらず、アルバイトの求人件数が十分に回復しない現象が起きている。経済活動の段階的な再開を受けて、アルバイト不足を訴える飲食店の割合は6割超まで急増。しかしウエイターなどの求人はコロナ禍前の半分にも達していない。背景には飲食業が置かれた厳しい現実があるとみられ、経営者の悩みは深刻さを増している。一方、日本経済全体をみれば人手不足どころか仕事不足の側面が強く、困窮大学生問題を生む一因にもなっている。政府は18歳以下を対象に1人10万円相当の給付を実施する方向だが、問題の抜本解決のためには雇用増加を実現する取り組みが必要だ。

    飲食店のアルバイトの求人件数は新型コロナウイルス禍前の水準を大幅に下回っている(Getty Images)※画像はイメージです
    飲食店のアルバイトの求人件数は新型コロナウイルス禍前の水準を大幅に下回っている(Getty Images)※画像はイメージです

    人手不足でもアルバイトの求人は低調

    「新型コロナの緊急事態宣言が明けて、飲食業を中心に人手不足感が強くなっている」。帝国データバンク情報統括部の杉原翔太主任研究員は最近の雇用市場の現状をこう解説する。

    帝国データバンクが11月25日に発表した、企業の人手不足に関する10月調査では、アルバイトやパートが不足していると感じている企業の割合は居酒屋などの飲食店で63.3%。9月調査の44.1%から急上昇した。9月末に緊急事態宣言が全国的に解除され、営業時間制限の緩和が段階的に進んだことが影響したとみられる。

    しかしこうした人手不足感とは裏腹に、求人件数の伸びには勢いがない。リクルートやマイナビなど61社でつくる全国求人情報協会(全求協)によると、10月のアルバイト・パートの求人広告掲載件数は57万919件で、前月比2.3%の減少。コロナ禍前の19年10月に比べると43.9%減となり、まだまだ回復の力強さは乏しいのが現状だ。職種別でみると、飲食店での給仕の求人広告は前月比9.3%増ではあるが、19年10月比でみると5割超減っている。

    先行き見えず、様子見ムード

    アルバイト先の定番といえる飲食店で人手不足感が強いにもかかわらず、求人件数は弱いままという状況について、全求協は「コロナ禍に一服感が出る中で経営者は採用意欲を高めているが、同時にしばらく様子をみようというムードも強い」と分析する。

    新型コロナの感染者数が落ち着きをみせているとはいえ、感染拡大の「第6波」への懸念や3回目のワクチン接種の進展をめぐる不透明感はぬぐえない。こうした事情が求人件数増加の鈍さに影響しているというわけだ。

    また、1年半を超えるコロナ禍で大きな打撃を受けた飲食業界では閉店に追い込まれた例も多く、求人がかつてのレベルに戻る前提が崩れている側面もある。さらに、営業を再開した飲食店が密回避のために入店人数を減らしているケースでは、コロナ禍前は5人だったホールのスタッフを2人に減らすといった例もあるという。

    働き手に広がる「飲食店離れ」

    しかも人手不足に悩む飲食業界には、控えめに人員を増やそうとしても採用が進まない事情がある。働き手の間で広がる「飲食店離れ」だ。

    飲食業界がバイト人材として期待する大学生でも、コロナ禍の中で進学した1、2年生には対面バイトの経験がない学生も多い。緊急事態宣言が解除され、感染リスクが減ったとしても、「今になって飲食店で働こうという気になれないケースもあるようだ」(全求協)。


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