令和4年春闘、「賃上げ必要」認識一致も気運高まらず

    連合は新型コロナウイルス禍の収束後を見据え、令和4年春闘を「未来づくり春闘」と位置づけた上で、人への投資を積極的に求めていく方針だ。ただ経済界は賃上げを容認する一方、一律での引き上げは困難と主張するなど、意見の隔たりもみられる。「成長と分配の好循環」を目指す政府を含め、賃上げの必要性では三者とも認識が一致しているが思惑は異なり、賃上げ気運は高まっていない。

    「もう一度ここで労働組合が要求し、賃上げを獲得し、それを社会全体に波及していくことの重要性をお互いに確認したい」

    2日の中央委員会であいさつした連合の芳野友子会長は、各組合に賃上げ要求を行うよう呼びかけた。

    芳野氏は賃上げの前提となる経済環境について「引き続きコロナ禍の中での闘争となるが、昨年とはかなり状況が異なる」と強調。日本の賃金がほとんど伸びていない現状にも言及し、賃上げの必要性を訴えた。

    賃上げをめぐっては、岸田文雄首相も11月26日に開かれた「新しい資本主義実現会議」で、「業績がコロナ前の水準を回復した企業には3%を超える賃上げを期待したい」と経済界に呼びかけた。政府は賃上げ企業への優遇税制拡充も検討中で、連合をバックアップする形となっている。

    これに対し、経済界も賃上げ自体には前向きな姿勢をみせる。経団連は、来年1月に公表する春闘の指針「経営労働政策特別委員会報告」に、「ベースアップも含めた新しい資本主義の起動にふさわしい賃上げが望まれる」との文言を盛り込む方針だ。

    もっとも、コロナ禍で企業や業種間の業績格差が広がる中、一律での引き上げは困難とも主張。自社の置かれた状況を踏まえて、労使協議で賃金を決める「賃金決定の大原則」の重要性は、さらに高まっているとする。

    連合も業種によって回復度合いが異なる事情に配慮し、闘争方針に「それぞれの産業における最大限の『底上げ』に取り組む」との表現を盛り込んだ。だが全組合が賃上げにこだわるとの基本姿勢は崩しておらず、一部の業種や企業では厳しい交渉が予想される。

    一方、政府の介入による「官製春闘」への警戒も渦巻く。経済同友会の桜田謙悟代表幹事は「『官製』によって新しい資本主義が出てくるものではない」と主張。連合の芳野氏も「政府発言だけでは改善しない」と話し、賃金決定はあくまで個別企業の労使協議で決めるべきとの考えを示す。(井田通人)

    >連合、賃上げ4%程度要求、4年春闘


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