中小企業、業績不振でコロナ禍の賃上げ苦しく

    新型コロナウイルス禍で経営が圧迫される関西の中堅・中小企業からは、連合が求める2%程度のベースアップ(ベア)や岸田文雄政権が目指す3%超の賃上げ目標をめぐり「業績が回復しておらず厳しい」との声が相次ぐ。関西は新型コロナ禍の影響を強く受け、賃金の減少率が全国平均より大きい実態も明らかに。法人税を払っていない赤字企業が賃上げした場合は補助金で報いるなど、柔軟な対応が必要との声が出ている。

    岸田首相は「新しい資本主義実現会議」で業績が回復した企業に3%超の賃上げを求めた=26日、首相官邸(矢島康弘撮影)
    岸田首相は「新しい資本主義実現会議」で業績が回復した企業に3%超の賃上げを求めた=26日、首相官邸(矢島康弘撮影)

    「コロナで先行きが不透明な状況。何とか従業員を守ってきたが、(賃上げで)さらにハードルを上げられるのは厳しい。周囲の経営者らも同様に考えている」。大阪府内の機械メーカーの経営者はそう述べ、「(政権が目指す)3%という高い数値目標の根拠が分からない。選挙目当てではないか」と訴えた。

    段ボール製品を手がける東大阪市の企業経営者は「新型コロナの影響で通期では赤字だ。大企業と中小企業では利益水準が全く違い、毎年安定して利益が出ているわけでもない。業績がともなっていないのに、賃上げ3%は厳しい」と打ち明ける。

    一方、兵庫県内の部品卸会社の経営幹部は「周囲が賃上げするなら歩調を合わせざるを得ない。『あそこは給料が安い』とうわさされてしまう」と、あきらめたように語った。

    ただ、関西の労働者の賃金をめぐる状況は厳しい。アジア太平洋研究所(APIR)の調査によれば、関西2府4県における今年1~8月の労働者1人あたりの平均給与額は、コロナ禍前の令和元年1~8月と比べ1・6%減少し、減少幅は全国平均(0・3%減)を大きく上回った。

    関西経済はインバウンド(訪日外国人客)への依存度が高い。コロナ禍でインバウンドが消滅したことで宿泊業や飲食業への打撃が大きく出て、これらの業種を中心に給与の引き下げが相次いだとみられる。

    また関西では、正規労働者より給与水準が低いパートタイム労働者数の減少幅も、全国平均より大きい傾向が続く。雇用契約を契約を切られるなどしたケースが多いとみられる。

    こうした状況は本来、1人あたりの平均給与額の上昇につながるが、それでも落ち込んだのは「関西における労働者の賃金をめぐる環境の回復の弱さを物語っている」(APIRの稲田義久研究統括)。

    稲田氏は「政府は賃上げをした企業への法人税の優遇を検討しているが、そもそも関西では企業全体における中小の割合が高く、多くが赤字で法人税を支払っていない。(税優遇でなく)賃上げした企業に補助金を給付するなど、柔軟な対応で賃上げを促進するべきだ」と指摘している。


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