石油輸出国機構(OPEC)加盟・非加盟の主要産油国でつくる「OPECプラス」が生産調整で難しいかじ取りを迫られている。原油価格高騰に危機感を募らせた米国などが協調して石油備蓄の放出方針を決めたが、その直後には新型コロナウイルスの新たな変異株「オミクロン株」の出現で原油市場が動揺し、価格は一転して下落。歳入の多くを原油の販売で賄う産油国は供給過剰による価格急落を恐れており、需給動向や消費国との関係をにらんだ神経戦が続きそうだ。
ニューヨーク原油先物相場は、指標の米国産標準油種(WTI)が10月下旬に一時1バレル=85ドル台と約7年ぶりの高値に急伸した。だが、新変異株の出現で原油市場の様相は一変。新変異株が経済活動に打撃を与えれば原油需要が落ち込むとの見方が台頭したことで、11月30日には一時64ドル台まで下落。今月1日は前日比0・61ドル安の65・57ドルと8月下旬以来約3カ月半ぶりの安値で取引を終えた。
日米などの消費国は、原油高騰がコロナ禍からの回復を目指す世界経済の重荷となることを危惧し、今秋以降、OPECプラスに原油の追加増産を要請。しかし、OPECプラスはその圧力をかわし続けてきた。
「(コロナ禍の)危機は落ち着いたが終わってはいない」。OPECの盟主サウジアラビアのアブドルアジズ・エネルギー相は10月下旬、米メディアに対しこう述べていた。ここにきての新変異株の出現と原油価格の逆回転で、その懸念は現実味を帯びつつある。
米国が主導した石油備蓄放出の協調策は事前報道があった上、発表後も放出規模が想定ほど大きくないとの印象から原油市場の反応は限られ、国内アナリストは「織り込みは終わってしまっている」と指摘。市場関係者の関心は、新変異株の行方に向かっている。
このアナリストは「OPECプラスが従来の増産計画(毎月日量40万バレルずつの減産縮小)を進めた場合でも来年には供給過剰に転じるとの予測が以前からあった中、欧州ではコロナの感染者数が急増し、米国などによる石油備蓄放出の協調策、新変異株の出現もあった。産油国は難しいかじ取りを求められる」と語る。
市場関係者の間では、石油備蓄放出の協調策によって産油国と消費国の溝が広がったとの声も聞かれる。一方、消費国にとって産油国との関係が極めて重要なことに変わりはない。協調路線を軌道に乗せていく努力が双方に求められる。(森田晶宏)































