新型コロナウイルスの新たな変異株「オミクロン株」が岸田文雄政権の対面外交を直撃している。とりわけ、首相が早期の実現を目指してきた米国のバイデン大統領との会談は元々、米側の事情で調整が難航していたが、オミクロン株の世界的な広がりでさらに不透明感が強まった。首相は当面はオミクロン株の対応などに専念しつつ、対面外交を本格化する時機を見極める構えだ。
「首相の訪米の具体的な時期は決まっていない」
松野博一官房長官は3日の記者会見でこう述べた。
首相は11月、英国で開かれた国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議(COP26)に出席した際、バイデン氏と短時間会い、早期に正式な会談を行う方針で一致。外務省を中心に日程調整を続けてきた。
だが、バイデン氏は大型歳出法案をめぐる与党内の対立に追われるなど、国内事情を抱えていたため、調整は難航した。首相は当初予定していた今月6日召集の臨時国会前の訪米を断念。年末年始に照準を合わせたが、今度はオミクロン株への対応を余儀なくされた。
政府は水際対策強化のため、全世界を対象に外国人の入国を原則禁止し、対面外交は事実上、困難な情勢になっている。首相周辺は「オミクロン株の市中感染が広がり、首相が国内で陣頭指揮を執らなければならない局面になれば米国に行くのは難しい」と話す。
オミクロン株は首相の訪米以外の対面外交にも影響を及ぼす。今月上旬に予定されていた安倍晋三元首相のマレーシアへの特使派遣や、若宮健嗣万博相の2025年大阪・関西万博のPRのためのドバイ訪問も見送られることになった。
今夏に猛威をふるったデルタ株は国内でほぼ収束し、11月下旬にはベトナムのファム・ミン・チン首相が来日し、首相と会談した。対面外交再開に向けた機運が高まりつつあった矢先だったが、オミクロン株が冷や水を浴びせた形だ。
外相の連続在職日数が戦後最長で、各国にも知己が多い首相だが、当面は対面外交は封印し、コロナ対策に専念することになる。(永原慎吾)