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学校法人のガバナンス、学外から監視強化 文科省有識者会議報告書

私立大などの運営母体となる学校法人のガバナンス(組織統治)強化策を議論する文部科学省の有識者会議は3日、私立学校法に基づき学校運営の諮問機関として各法人に設置されている「評議員会」の権限を大幅に拡充し、業務の執行機関である「理事会」に対する監督機能の強化を柱とする報告書を取りまとめた。文科省は来年の通常国会に同法改正案の提出を目指すが、大学関係者の反対論が根強く曲折も予想される。

有識者会議は、増田宏一・日本公認会計士協会相談役が座長を務め、企業統治に詳しい弁護士や大学教授らで構成。税制優遇などの恩恵を受ける学校法人には公共性が求められるが、日本大で前理事長の田中英寿(ひでとし)容疑者(74)が所得税法違反容疑で逮捕されるなど私立大の不祥事が相次いでおり、ガバナンス機能の強化が課題となっていた。

現行法では、法人の意思決定機関である理事会が業務内容などを決め、職員や卒業生らで構成される評議員会が事業計画などについて理事会に意見を述べる仕組みになっている。

これに対し、報告書では評議員会を「最高監督・議決機関」と位置付け、理事の選任・解任権を持たせる。理事会の権限乱用を防ぐため、予算や決算、規則の変更といった重要事項にも評議員会の議決が必要とした。

評議員は学外から起用し、理事会による選任・解任を認めない。現役の理事や教職員が評議員を兼ねることも禁じ、辞職後も5年経過するまでは就任を認めない。また、評議員や理事の選定は透明性を担保するため諮問委員会を設置し、選定した理由や過程を公開するのが望ましいとした。

文科省には、令和元年の政府の「骨太の方針」などで社会福祉法人や公益財団法人などと同等のガバナンス機能を発揮できるよう制度改正が求められていた。


■私大は反発「建学の精神 瓦解」


文部科学省の有識者会議が3日に取りまとめた学校法人のガバナンス(組織統治)強化策は、くしくも、日本大前理事長の田中容疑者が所得税法違反容疑で東京地検特捜部に逮捕され、真相究明が進むなかでの提言となった。ただ、改革の柱となる学外からの監視機能強化には大学側から異論も噴出。国際化や少子化に伴って大学改革の機運が高まるなか、文科省の実行力が問われることになる。

「記者会見を行い、社会に恥じることのないよう対応するのが筋だ」。田中容疑者が理事長職を辞任した日大について、末松信介文科相は3日の閣議後記者会見でこう語った。同省は日大に説明責任を果たすよう指導を繰り返しているが、これまでに記者会見は開かれていない。

国からの補助金交付や、「隠れた補助金」と呼ばれる税制優遇を受ける学校法人には説明責任が伴う。日大では、5期13年にわたり理事長を務めた田中容疑者に幹部人事や学校運営の実権が集中。法人の意思決定を担う理事会や、助言役の評議員会が機能不全に陥っていたとみられる。

現行の私立学校法は、それぞれの学校の成立背景の違いから自主性が重視されており、ガバナンスの規定は比較的緩やか。日大に限らず、私立大で理事会や評議員会の役割の形骸化を指摘する声は多く、有識者会議でも監督機能強化が主要な論点の一つとなった。

今回の報告書では、理事の選任・解任や決算などに、外部から起用した評議員会の議決を必要とするなど評議員会の権限や独立性の強化が方向づけられた。

ただ、大学側はこうした学外者による監視機能強化に反発。早稲田大や慶応大など120校以上が加盟する日本私立大学連盟は「建学の精神を瓦解(がかい)させる」などとする文書を10月に発表。評議員を学外者に限定すれば、長期的視野で教育研究の経営判断を議論することは困難と批判し、学外者を「一定割合以上」とすることを提案した。しかし、報告書には反映されず、私立大関係者は「十分に議論が尽くされたとはいえない」と話した。

一方、巨額の国費が投じられ、教育研究と経営双方の権限が学長に集中している国立大も不祥事と無縁ではない。昨年6月には北海道大で職員へのパワーハラスメントがあったとして文科相が総長を解任する異例の事態が発生。東京大や筑波大では、教職員から学長選をめぐる選考過程の不透明さに批判が起きている。

岸田文雄政権の目玉政策として世界トップ研究大学の実現を目指す「10兆円大学ファンド」の本格的な運用が始まるなか、大学改革は急務の課題で、文科省には環境整備に向けたかじ取りが求められる。


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