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脱炭素へ「本気で産業構造転換を」 末吉WWFジャパン会長

2050年の「カーボンニュートラル(温室効果ガス排出量実質ゼロ)」を目指す日本。その実現を後押しする環境保護団体「世界自然保護基金(WWF)ジャパン」は1971年の設立以来、地球温暖化を防ぎ、生物多様性を守る活動に力を注いできた。岸田文雄首相が2030年度の温室効果ガスの排出量を13年度から46%削減する目標を表明した11月の国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議(COP26)の議論を踏まえ、WWFジャパンの末吉竹二郎会長は「日本は産業構造の転換に本気になって取り組むべきだ」と訴える。

インタビューに応じるWWFジャパンの末吉竹二郎会長=11月26日、東京・三田(酒巻俊介撮影)
インタビューに応じるWWFジャパンの末吉竹二郎会長=11月26日、東京・三田(酒巻俊介撮影)

――COP26の結果への評価は

「全体としては成果があった。『世界の気温上昇を産業革命前から1・5度に抑えるための努力を追求する』という文言が成果文書に正式に入ったからだ。脱炭素を加速させることになる。しかし、成果文書採択の最後の最後で、石炭火力発電に依存するインドが、石炭火力を『フェーズアウト(段階的廃止)』から『フェーズダウン(段階的削減)』に変えるよう主張し、中国が追随した。英国のシャルマ議長は声を詰まらせながら成果文書を採択したが、脱炭素の流れができたのは間違いない」

――これを受け脱炭素は進むのか

「COP26の流れを受けて、ドイツでは社会民主党、環境政党の緑の党など3党が11月24日、連立政権の樹立で合意。気候変動対策では石炭火力の全廃時期をメルケル政権時代に決めた2038年から30年に前倒しするのが望ましいと表明した」

「日本以上に石炭への依存が高いにもかかわらず、石炭火力の〝終わりの始まり〟をドイツが決定した。国連のグテレス事務総長が二酸化炭素(CO2)排出量削減に向け、OECD(経済協力開発機構)加盟国に対し『30年までに石炭火力の段階的廃止を求める』と述べたことに、ドイツが援護射撃の役目を果たすことになる」

――日本は今後も石炭火力の活用を続ける。段階的削減でも厳しい

「10月に決定した日本のエネルギー基本計画では、電源に占める石炭火力への依存度は30年度で19%。日本はGDP(国内総生産)世界3位にもかかわらず、脱炭素へのスピードが世界に比べて遅い。というより逆行していると世界では映る。岸田首相がCOP26の首脳級会合で、途上国への最大100億ドル(1兆1400億円)の追加支援を表明したことは評価するが、資金を出せばいいわけではなく、日本への理解が低下しかねない。ビジネスの世界でもネガティブにつながる」

――どう対応すべきか

「18年度で石炭や石油など化石燃料への依存度は77%と高い。太陽光や風力などの再生可能エネルギーは天候によって発電量が不安定というが、過去を振り返ると再生エネへの転換を進めてこなかった。脱炭素社会の実現に向け、CO2を排出しない電源の多様性と量の確保が欠かせない」

「加えてライフサイクルで評価する時代だ。原料調達から廃棄まで全てを通してグリーン(環境配慮)であることが今やビジネスルール。資金の出し手である金融機関だけでなく、環境意識を高める消費者からも受け入れられなくなる。地球温暖化という深刻化する危機対応を世界が求めているわけで、企業は応える必要がある」

――時間的猶予はない

「国は本気になって脱炭素に動くべきだ。世界の動きに逆行すれば日本は投資対象から外されかねない。世界の資金が日本に入ってこなくなり、世界のビジネスネットワークにも入れなくなる。産業構造の転換を真剣に考えるべきときだ」

――WWFジャパンは、30年に生物多様性を回復に転じさせる目標を掲げている

「今年9月、設立50周年を迎えた。当初は希少動物の保護という特定動物を守ることに注力したが、今では生物多様性を守ることに活動領域を広げた。これまでの活動を踏まえ、30年までに生物多様性の減少傾向を止めてゼロにする。プラスに持っていくスタートラインに立つことが大事で、まさに勝負の10年だ」

「気候変動と生物多様性は一体であり同根だ。2つの大きな問題をどうやって交えながら、地球の資源を守るかが問われている。経済成長に伴うCO2排出量の増加で自然は壊されたことを考えると、ともに経済問題に行き着く。企業関係者は生物多様性への理解を深めてほしい」

――WWFジャパンの課題は

「世界はトーク(議論)からアクション(行動)、そしてインパクト(結果)へと要求を高めている。われわれが果たす役割の重要性は高まっており、新たなチャレンジに取り組む必要がある、そのために組織を質、量ともに拡充していかなければならない。本部に相当するWWFインターナショナルや各国事務所とのコラボレーションにも力を入れる」

――産業の発展と地球環境の共生を目指し平成4年に創設された「地球環境大賞」(主催・フジサンケイグループ)への評価は

「30年前に始めたことは先見の明があったということであり、継続も素晴らしいことだ。もっとパワーアップしてほしい。われわれもメディアのアウトリーチ(働きかける)力を活用して、企業と市民の2つの世界を結び付けて、気候変動と生物多様性の問題に取り組む機運を高めていかなければならない」

■すえよし・たけじろう 東京大経済卒。昭和42年三菱銀行(現三菱UFJ銀行)。取締役ニューヨーク支店長などを経て平成10年日興アセットマネジメント副社長就任。同社勤務中の12年国連環境計画(UNEP)金融イニシアチブ(FI)運営委員メンバー。30年からWWFジャパン会長。76歳。鹿児島県出身。


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