FIRE達成後の生活…「適温」が肝要
FIREを実現したその先に、どのような生活が待っているのだろうか。端的に言えば、もう仕事をしなくていいのだが、桶井さんは「やりがいを新たに見つけることが大切」と語る。桶井さん自身、ブログやSNS、単行本の執筆を通じて多くの投資家と新たなコミュニケーションが生まれ、メディアにも注目されたことでやりがいを感じたという。今年の秋からは「子ども食堂」への支援に取り組んでいるほか、60歳を目途にレストランや大浴場などを備えた「シニアマンション」に入居することを目指し、年間配当金240万円を目標に資産形成を継続している。
退職前こそ、所属がなくなることに不安は覚えたが、不安はすぐに解消された。「企業だけが所属先ではない」ということに気づいたからだ。職業を尋ねられると、「フリーランス」もしくは「執筆業」と答えているようにしているという。
桶井さんは現在、日本や米国をはじめ世界17カ国・地域の高配当株と増配株を中心に投資しながら、急がず、慌てず、背伸びせず、「ほどほどの状態の暮らし」を続けている。桶井さんはそれを「適温FIRE」と形容する。
年功序列や終身雇用が崩壊し、将来に金銭的な不安を感じる人は少なくない。先行きが不透明な時代だからこそ、定年まで会社で働くだけが人生ではないと考え、FIREを意識する人が増えているのかもしれない。
桶井さんは「資産形成には、他人より稼ぐか、節約するか。両方ならなお良しです。そして投資すること。それ以外に道はありません」と強調し、こう続けた。「抜け道、近道、裏道などないのです。とにかく、労働、節約、貯蓄、投資の歯車を止めることなく回し続けることです」