• 日経平均27999.96-249.28
  • ドル円134.96134.97

首相、子育て世帯の所得増訴えも見えぬ分配原資

6日の所信表明演説で、岸田文雄首相は新型コロナウイルス危機を乗り越えた先に、成長も分配も共に実現する「新しい資本主義」を目指すと強調した。「人への投資」には特に力点を置き、未来を担う若者世代や子育て家庭の所得増を図る。ただ、感染「第6波」で行動規制が再び強まる懸念は拭えず、分配の原資を生む成長戦略も踏み込み不足とあって、好循環の実現に向けた道筋は見えない。

第207臨時国会の衆院本会議で所信表明演説を行う岸田文雄首相=6日午後、衆院本会議場(松井英幸撮影)
第207臨時国会の衆院本会議で所信表明演説を行う岸田文雄首相=6日午後、衆院本会議場(松井英幸撮影)

首相は演説で、協働や絆を重んじる伝統や文化を育んできた日本だからこそ、「人がしっかりと評価され報われる、人に温かい資本主義を作れる」と訴えた。

この30年間、平均賃金は欧米などでは大きく伸びたが、日本ではほぼ横ばいにとどまり、先進7カ国(G7)で最低水準になった。いつの間にか世界に取り残された現状を打破するため、首相は国内の賃金を引き上げ個人消費を活性化する好循環を目指している。

演説では、経済対策で当面必要な政策を実現させた後、「人への分配」を本格化する考えを示した。女性の就労を妨げる制度の見直しや、子育てと介護の負担軽減などを通じ「男女が希望通り働ける社会づくり」を進める。若者世代や子育て家庭の所得引き上げを実現することで「分厚い中間層」を取り戻したい考え。

一方、コロナと共生するウィズコロナ経済は動き出したばかりだ。消費は回復しつつあるが、新たな変異株「オミクロン株」の影響もあって感染が再拡大すれば冷や水を浴びせられる。

また、追加経済対策の財政支出は55・7兆円と過去最大規模だが、目玉の家計給付は多くが貯蓄に回りかねない。政府が実質国内総生産(GDP)で5・6%分と見込む経済効果は、民間エコノミストからせいぜい1~3%と指摘され、費用対効果が疑問視される。

いま必要なのは行動規制を繰り返さない感染対策の強化と、コロナ禍で傷んだ経済を再び活気づけ企業が賃上げの原資を作れるような成長戦略だ。耳当たりの良い分配戦略に固執して足元の問題への対応がおろそかになれば、新しい資本主義の理想も実現できなくなる。(田辺裕晶)


Recommend

Biz Plus

Recommend

求人情報サイト Biz x Job(ビズジョブ)

求人情報サイト Biz x Job(ビズジョブ)