トラックなど商用車で電気自動車(EV)の開発競争が加速している。物流業界の脱炭素化の需要を捉えるためだ。日野自動車といすゞ自動車は、令和4年度に量産の小型トラックをそれぞれ初めて発売する。EVは1回の充電で走れる距離が短いため、長距離輸送よりも、地域の配達拠点と最終配送先までの「ラストワンマイル」で活用が進みそうだ。
日野は積載量約1トンの小型トラック「デュトロ Z(ズィー) EV」を来年初夏に投入する。宅配向けに市街地での利用を想定しており、走行可能距離は100キロ程度を目指す。急速充電器を利用すれば1時間以内に満充電できる。地上高を約40センチと低くし、荷物の積み降ろしを楽にした。
いすゞは2トン程度の小型トラックを販売する。既存のディーゼルエンジン車と同じ車台を利用して生産費用を下げる。EVは車載電池のコストが大きく、車両価格の高さが弱点になるためだ。主力の藤沢工場(神奈川県藤沢市)で生産する。
EVベンチャー「ASF」(東京)は佐川急便と小型EVを共同開発している。佐川急便は配送で利用している軽自動車約7200台を12年までに小型EVに切り替える。来年9月から順次導入する。ASFが設計し、生産は中国の自動車メーカーが担う。
佐川急便グループの車両が年間に排出する二酸化炭素(CO2)の約1割に当たる2万8000トンを削減できる。宅配に必要な台車を収納するスペースを設けるなど専用の仕様で使い勝手も高めた。
佐川急便の担当者は「顧客も自社の荷物が出すCO2の量を注視している」と強調。シェア拡大に向け脱炭素の重要性が増していると指摘した。
商用車の電動化 トラックやバスなど商用車の動力源の一部または全てに電気を利用すること。日本政府は小型商用車の新車販売について、令和22年までに全て電気自動車(EV)やハイブリッド車(HV)などの電動車や、二酸化炭素(CO2)と水素を原料とする合成燃料を使う車両にする目標を設定。長距離輸送の大型トラックには、水素で走る燃料電池車(FCV)の方がEVよりも走行距離が長く、適しているとされる。