ファミリーレストランを各地で展開する「ジョイフル」(大分市)がYouTubeで動画を制作する人気ユーチューバーのヒカルさん(30)とコラボレーションした商品が空前のヒットとなっている。ジョイフルは新型コロナウイルス禍で苦境に立たされ、200店以上も閉店せざるを得ない状況に追い込まれたが、ヒカルさんとのコラボは株価を一時急騰させるほどの突破力を発揮。勢いに乗る同社は14日夜からコラボ商品の第2弾となる「ヒカル考案 冗談抜きで旨いおかんの唐揚げ」の販売を開始した。「ヒカルさんはまさに救世主です」。同社が気鋭の若手ユーチューバーに寄せる期待は大きい。
「効果あるのかな」コラボ当初は半信半疑も…
ジョイフルとコラボ商品を開発したヒカルさんは、チャンネル登録者数約460万人の人気ユーチューバー。2013年から動画投稿を始め、縁日のくじ引きの「闇を暴く」として、くじを大量に購入して当たりの存在を検証する動画などで人気を博した。黒と金色のヘアスタイルがトレードマークで、独自のアパレルブランドを立ち上げるなど若者を中心に絶大な人気を誇る。
「九州の大分にある企業なので、まさかこんなことになるとは思っていませんでした。やはりネットで発信力のある方の影響は大きい。あまりの反響に驚いています」。ジョイフルの担当者が興奮冷めやらぬ様子なのも無理もない。今年7月27日に全国のジョイフル各店とオンラインショップで販売を始めたヒカルさんとのコラボ商品「ヒカル考案 冗談抜きで旨いハンバーグ」と「ヒカル考案 冗談抜きで旨いハンバーグ&えびフライ」は約1カ月で累計50万食を売り上げ、9月には100万食を突破。現在までに150万食以上が売れている。いずれも過去に類を見ない「史上最速記録」(同社)を達成したヒット商品となった。
「そんなに効果があるのかな」。コラボ当初、ジョイフルの担当者はヒカルさんの発信力に半信半疑だった。いくら若い世代に人気があるといっても、「うちのハンバーグのような食品の売り上げにここまでの影響があるとは読み切れていなかった」(担当者)というのだ。
しかし人気ユーチューバーとのコラボは来店客のみならず投資家さえも刺激。同社の株価は7月下旬には年初来高値を更新し、ストップ高をつけたこともあった。社会現象ともいえるヒットの結果、福岡県内にある同社の食品加工工場はフル稼働で対応せねばならなかったが、同社関係者にとってはまさに「うれしい悲鳴」の状態だったといえる。ヒカルさんとのコラボが決まるまで同社はコロナ禍で苦境に立たされていたからだ。
ジョイフルグループは2019年6月末時点で全国に889店を展開していたが、今年6月末には672店に縮小。2年間で217店が閉店に追い込まれた。
転機となったのは、ジョイフルの苦境を知ったヒカルさんの「救いたい」という思いだった。幼少期を兵庫県姫路市で過ごしたヒカルさんはよく地元のジョイフルを利用していたという。ヒカルさんが直接、大分市のジョイフル本社を訪れ、同社の穴見くるみ社長や商品開発担当者らと協議を重ねたうえで初のコラボ商品は誕生した。