連動するウクライナ危機と台湾危機 まさに“正念場”令和4年の幕が開く

    ウクライナとロシアの国境に約9万人のロシア軍が集結し、その数はさらに増大されつつある。このような状況から、来年早々にはロシア軍が最大約17万人規模でウクライナに侵攻する可能性があるとされている。12月7日には、バイデン米大統領とプーチン露大統領とのリモート会談が行われ、バイデン大統領はウクライナ東部国境の緊張緩和を、プーチン大統領はNATO(北大西洋条約機構)をウクライナまで拡大しないことの保障をそれぞれ求めたもののいずれも同意を得られず、バイデン大統領が、ロシア軍がウクライナに侵攻した場合は厳しい経済制裁に踏み切る旨通告して終わった。

    ウクライナはかつてソビエト連邦の一員であり、その首都キエフはロシアの故地であった(Getty Images)※画像はイメージです
    ウクライナはかつてソビエト連邦の一員であり、その首都キエフはロシアの故地であった(Getty Images)※画像はイメージです

    旗幟を鮮明にしていない日本

    ウクライナがかつてはソビエト連邦の一員であり、その首都キエフはロシアの故地であること、ウクライナ東部の住民の多くはロシア系であること、ロシアから見ればそのウクライナがNATOに加盟することはロシアの「核心的利益」に反すること、7年前、ロシア・ソチで行われた冬季五輪の閉幕後にロシアがウクライナのクリミア半島に侵攻しこれを併合したこと、ロシアと中華人民共和国との国境は安定し、両国は軍事的連携を深めていること、リモート会談後にバイデン大統領が米軍をウクライナに派遣する可能性を否定したことなどを総合すれば、来年、ロシア軍がウクライナに侵攻する蓋然性は高いと見ておかなければならないだろう。

    7年前、ロシア・ソチで行われた冬季五輪の閉幕後にロシアがウクライナのクリミア半島に侵攻しこれを併合した(Getty Images)※画像はイメージです
    7年前、ロシア・ソチで行われた冬季五輪の閉幕後にロシアがウクライナのクリミア半島に侵攻しこれを併合した(Getty Images)※画像はイメージです

    このウクライナ危機は日本にも重大な影響を及ぼす。ロシアがウクライナに侵攻すれば、欧米は対ロシアにも備えなければならなくなり、南シナ海、東シナ海における対中抑止力の低下は避けられない。習近平指導部にとっては絶好の機会に見えるだろう。その状況にあってなお、対中抑止を機能させるためには、日米同盟をより確実かつ強固なものにするとともに、それを習近平指導部に認識させる以外にない。

    12月1日、台湾のシンクタンクが主催した講演会で安倍晋三元総理が「台湾有事は日本有事であり、日米安保の有事である。そのことを見誤ってはならない」と指摘したことは、誠に時宜に適(かな)っている。

    折しも来年2月には北京で冬季五輪が開催される。アメリカは、中華人民共和国のウイグル人に対する人権侵害を非難し、冬季五輪を外交的にボイコットする旨表明し、オーストラリア、イギリス、カナダもこれに続いている。しかし、肝心の日本は未だに旗幟(きし)を鮮明にしていない。岸田文雄総理は国益を考え独自に判断する旨表明しているが、世界の情勢を見据え冷静に考えれば、アメリカなどと歩調を合わせることこそ国益に適うことは明らかだろう。


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