トヨタがバッテリー式電気自動車(BEV:バッテリー・エレクトリック・ヴィークル)の世界販売台数を2030年に350万台に引き上げると宣言した。従来の目標値は、燃料電池車(FCV)も含めて200万台。BEVだけで350万台という目標値は大幅な上方修正である。これはダイムラーやグループPSA、あるいはスズキの世界販売台数に等しい数字でもある。世界有数の自動車メーカーを新たにあと8年で作る、と考えると、どれほど大規模な投資であるかが想像できる。
水面下で準備していた盤石な体制
BEV増産の大きな課題であるエネルギー源の確保に関しても、バッテリーの増産に4兆円の投資を明らかにした。すでに280ギガワットを確保した模様。盤石の体制でEV戦略を推し進める。
ただし、世界のカーボンニュートラルの流れに重い腰を上げたとするのには無理がある。というのも、BEVへの巨額投資の発表と同時に、近未来のBEVを発表しているのだ。2030年までに、20車種のBEVの投入を計画しているという。2022年にまず「bZ4X」を発売する。
そもそもハイブリッド車の「プリウス」の量産を開始しているわけで、「トヨタ=環境に後ろ向き」とする環境団体の評価にも納得できない。
豊田章男社長が立つステージには、合計17台のBEVが並んでいた。環境性能に優れたエコカーだけではなく、先進技術をリードするレクサスをはじめ、オフロード走行を意識したSUVや3列シートのミニバン、あるいは走りの性能が自慢のスポーツカーの姿もある。
それら17車種がすぐさま市場に投入されるわけではないが、披露されたテスト映像では、マスタードライバーである豊田社長が自らBEVのステアリングを握り、満足げにドライブしているシーンが映っていた。開発は最終段階にある。いくら試作モデルとはいえ、短時間にこれほどのモデルをお披露目できるわけではない。世論に急かされてBEV戦略を前倒ししたのではなく、世界市場の混沌に同調したのでもなく、あくまでトヨタらしいクルマの完成を水面下で進めていた。そして今、機が熟したのだと判断するのが自然だろう。