「正直者がバカを見る」で本当にいいのか
政府は、「広報活動及び採用選考活動の開始日より前に実施されるインターンシップが実質的な採用選考活動となっている事態」について、「学生に混乱をもたらすとともに、学生が学修時間等を確保しながら安心して就職活動に取り組める環境を大きく損なう」としている。(内閣官房「2022年度卒業・修了予定者等の就職・採用活動に関する要請」より)
だが、そうした懸念もむなしく、多くの企業はルールを破っている。ルールを正直に守った学生は安心して就職活動に取り組めないという皮肉な状況となっている。正直者がバカを見ているともいえよう。
このままでは、国や企業が出す情報を多くの若者が信じなくなる。それはゲーム理論でいう「囚人のジレンマ」の状態を引き起こし、労働者にとっても企業にとってもデメリットが大きい。改善するには、法的規制を導入するしかないだろうが、本当にそれでいいのだろうか。
ルール破りが常態化していること、政府や経団連の呼びかけが空文化していることについて、各企業の人事部は重く受け止めるべきだろう。 (就活コンサルタント 竹内 健登)
竹内 健登(たけうち・けんと) 就活コンサルタント。東京大学工学部卒。就活塾「ホワイトアカデミー」を創立・経営。これまで800人以上の就活をサポート。塾はホワイト企業の内定が出なければ費用を全額返金する制度が特徴。YouTubeチャンネルではホワイトな業界の紹介や大手企業の倍率、ESの添削を公開するなど塾の就活ノウハウを一部紹介している。著書に『子どもを一流ホワイト企業に内定させる方法』(日経BP)。