「最後の猟師たち」語り部に栃木の狩猟文化を執筆

    帝釈山地、足尾山地、八溝山地と三方を山に囲まれた栃木県には古くからクマやシカ、ウサギ、ヤマドリなどが生息していた。本来の狩猟は毛皮を売ったり、内臓は干して薬、肉は貴重なたんぱく源として食したりと「生きるため」「趣味」が主目的で、自然と共生しながらの狩猟文化を醸成してきた。

    栃木の狩猟文化を紹介する「下野猟師伝」を出版したフリーライターの丸山美和さん(石川忠彦撮影)
    栃木の狩猟文化を紹介する「下野猟師伝」を出版したフリーライターの丸山美和さん(石川忠彦撮影)

    変化が訪れたのは近年のこと。被害が深刻化の一途をたどる有害鳥獣捕獲に対し、奨励金が出るようになったことがきっかけになったという。

    銃による猟とわな猟を行う日光市鬼怒川温泉大原の杉本祐二さん(67)は、料理人や鳥獣管理士の資格を持ち、国や県の若手狩猟者育成事業にも協力しているが、「先人が築いてきたコミュニティーが崩れ、猟師同士の関係が悪化した」と現状を嘆く。

    奨励金目当てに初心者でも参入しやすいわな猟を始める人が増え、猟法のバランスも変わった。猟師同士にあったテリトリーへの配慮も崩れていった。高齢化もあり、銃による狩猟が盛んだった昭和56年に約1万5千人いた猟師は、現在約4千人。今では猟の手法も半数がわな猟だ。

    転換点を迎える狩猟の世界を取材した丸山さんは、新型コロナ禍でも加速した価値観の多様性に思いをはせる。「田舎暮らしや農業に関心を持つ人など、多様な生き方ができる時代。自然における暮らしの先にある狩猟についても、本を読んだ方が少しでも興味を持ってもらえたらうれしい」

    (石川忠彦)


    Recommend

    Biz Plus

    Recommend

    求人情報サイト Biz x Job(ビズジョブ)

    求人情報サイト Biz x Job(ビズジョブ)