ーー大企業に提案する際に気をつけることはありますか?
「トライアルでやってみませんか」と絶対に言わないことです。ベンチャー企業の中には「大企業と組んだ実績」が早く欲しくて、つい「まず試してみませんか」と提案する企業もいると思います。
しかし、トライアルで始めた連携はトライアルで終わってしまい、次の展開がありません。私が提案する時は、最初から本格的な連携を前提にして提案しています。形になるまでは手間も時間もかかりますが、長期的に考えればその方が長くお付き合いできるからです。
ーー大企業とベンチャーが組む際にはスピードの違いも問題になることもありますが、村本さんはどのような対策をしていますか。
焦らないことです。大企業とベンチャー企業のスピードが違うのは当然ですし、それは決して大企業が手を抜いているからではありません。私も大企業にいたことがあるので分かりますが、担当者がどんなに頑張っても稟議を通すには時間がかかるもの。
ベンチャー企業ができるのは、担当者が稟議を通しやすいように、できる限りの資料を渡すだけです。ちなみに以前、大企業に提案してから「検討します」と返信があったものの、一向に連絡がないので諦めていたら、1年後に「稟議が通りました」と連絡がきたこともありました(笑)
自分でサービスを使うことで「ユーザー視点」を持ち続ける
ーー村本さんは起業前からマーケティングのプロとして活動してきましたが、事業を成長させる上で意識しているポイントがあれば教えてください。
常に顧客の視点で考え続けることです。事業を立ち上げる時は、多くの人が顧客視点で考えているでしょう。しかし、事業を続けていく上で、いつのまにか独りよがりになってしまうことも少なくありません。
自分でサービスを作っていると、初めてサービスを触る人の感覚が失われるものです。常に、初めてサービスを触る人の気持になって改善点や不満を持つことが大切ですね。
ーーどうすればユーザー視点を持ち続けられるのでしょうか。
自分でサービスを使い続けることです。私は「アリススタイル」の一番のヘビーユーザーで、自分で商品の発送もします。お客さんがどのように商品を返してくれているかも毎回確認していますね。
自分でサービスを使うからこそ「もっと商品を貸しやすく、返しやすくできないか」常に考えられるのです。
ーー最後に、村本さんの仕事へのモチベーションについても聞かせてください。
お客さんが喜んでくれた時のワクワク感です。たまに私が貸し出した商品が返ってきた時に、商品と一緒に「いい商品を貸してくれてありがとうございます」という手紙が入っていることがあるんです。
アプリでレビューが書ける時代に、わざわざ手紙を書いて感謝してもらえた時は「この仕事をしてよかった」と思いますね。サービスを使ってくれた人にちょっとでも喜んでもらうこと、貸した人と借りた人の想いを繋げることが、私のモチベーションになっています。
(編集:眞田幸剛、取材・文:鈴木光平)