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【学芸万華鏡】囲碁界で躍進〝AIソムリエ〟の破壊力 20歳の関航太郎天元

囲碁界に、20歳になったばかりのタイトルホルダーが誕生した。12月6日に決着した第47期天元戦五番勝負を3勝1敗で制した関航太郎天元だ。20歳0カ月での天元奪取は、第37期(平成23年)の井山裕太(22歳5カ月)を10期ぶりに更新する天元戦歴代最年少。七大タイトル全体をみても、令和元年・名人戦の芝野虎丸(19歳11カ月)に次ぎ2番目の年少記録。プロ入りから4年8カ月で七大タイトルの一つを獲得するのは、芝野の5年1カ月を抜き史上最速だ。「AIソムリエ」と呼ばれるほど囲碁AI(人工知能)ソフトに精通していることが、快挙を支えた。

第47期天元戦五番勝負の第4局に勝利し、初の七大タイトルを奪取した関航太郎天元(日本棋院提供)
第47期天元戦五番勝負の第4局に勝利し、初の七大タイトルを奪取した関航太郎天元(日本棋院提供)

驚愕の〝出世〟

「ここまでできるとは思わなかった。結果もそうですし、内容的にも自分の実力以上のものが出せた」

終局後、落ち着いた様子で五番勝負を振り返った関天元。35人によって争われた本戦トーナメントで大西竜平七段や本木克弥八段ら年上の実力者を破ると、挑戦者決定戦では芝野王座(当時)に勝利。「トップクラスとは相当、差があると思っていたけど、(芝野に勝ち)そこまでではないのかな」と自己分析していたのが9月9日。それから3カ月後にはタイトルホルダーに。「ゆくゆくは取ると思っていたが、これほど早いとは…」と日本棋院の小林覚理事長も驚愕(きょうがく)するほどの〝出世ぶり〟だった。

名伯楽の育成術

5歳のとき、ほぼ初心者の状況で藤沢一就八段が主宰する新宿こども囲碁教室に通い始めた。「級位者でもやる気と見どころがあれば、早くから鍛錬した方がよい」と考えた藤沢八段は、同学年の広瀬優一五段や上野愛咲美(あさみ)女流棋聖らとプロを目指すグループを作った。名伯楽の見立ては当たる。小3で日本棋院の院生になると、6年時の2013(平成25)年には、ワールドユース選手権の少年の部(12歳未満)で日本人初優勝を果たしたのだ。この年、青年の部(13~16歳)で準優勝したのが芝野。のちに中国や韓国のトップ棋士になる面々が優勝者に名を連ねる大会での快挙だった。

順調に力をつけ平成29年、15歳でプロ入りを果たした。ちょうど囲碁AI搭載ソフトが普及してきたころで、存分に活用した。多くの棋士がそうであるように、AIソフト相手に対局したり、自らが対局した棋譜の善悪をAIソフトに判定させ、今後の打ち方に取り入れたりした。ワインについて深く、正確な知識を有する専門家を呼称する「ソムリエ」にちなみ「AIソムリエ」と呼ばれるほど詳しくなった。しかし多くの棋士が取り入れるようになると、とくに序盤は相手も研究しているので壁にぶつかる。

激変した勢力図

そこで方針転換。「AI同士が対局するのを見ることが多い。人間にはない発想の手が出てくるので、興味深い」と関天元。常識にとらわれ、人間では打つ勇気も、思いつきもしない手を何十、何百と「学ぶというより趣味のように」(関天元)見ているうちに、感覚が磨かれてきたという。

従来、AIソフトに詳しいのは対戦相手の一力九段だとされてきた。「AI時代の新定石」の副題がついた著書も刊行しているほど。AIを利用して強くなり昨年、碁聖と天元を獲得したその一力九段を、新星が破った。「フルセットまでいきながら勝てなかった名人戦七番勝負の直後に天元戦の対局で、一力さんは気落ちしていたかも」(小林理事長)という側面があったにせよ、立派なものだ。

囲碁七大タイトルをめぐる状況は、1年前と様変わりしている。30代に入り保持数を減らしてきた井山三冠を、2つずつ持つ芝野と一力がどう崩すかと見られていた。しかし増やすどころか芝野と一力は無冠に転落。井山が5冠になる一方、許家元十段と一力、さらに芝野より若い関が台頭してきた。1年後のことは、AIでも予測できないようだ。


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