小川さんは、副軍師だけでなく野馬追を支える5地域のひとつ「宇田郷」の騎馬会長も兼務し、行事を統括する重責を担う。コロナ禍の窮地だからこそ、伝統を途絶えさせてはいけないという使命感がある。
「野馬追は祭りではなく神事。地域の安泰、平和を願うもの」。小川さんはそう教えられてきた。それだけに、コロナ禍や東日本大震災10年を前に起きた大きな地震を乗り越えるためにも、今年の野馬追にかける思いは強かった。
しかし、新型コロナ感染の急拡大を受け、騎馬行列などを除き甲冑競馬や神旗争奪戦など、主な行事の中止が開催直前に決定。小川さんは「騎馬行列では沿道の人に喜んでもらえた」と話す一方で「本来の形でやりたかった」との思いを日に日に強くしている。
完全開催を願う
2月の地震では、野馬追の総大将出陣式が行われる相馬中村神社(相馬市)の大鳥居にもひびが入り、今月ようやく建て替えられたばかり。
「来年こそはコロナ禍以前の野馬追に戻ってほしい。そして、馬に乗って新しい鳥居をくぐれれば…」
3年ぶりの〝完全開催〟で「世の中の落ち着きを取り戻したい」。小川さんはそう願っている。(芹沢伸生)