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    夢舞台、千代に「八千代座」 開業110年、熊本

    木戸口をくぐり劇場に入る。目に飛び込んでくるのは天井を埋め尽くす色鮮やかな呉服店や酒蔵の広告。朱塗りの欄干に、並んだちょうちん。江戸時代に戻ったかのような空間が広がっていた。

    江戸時代の芝居小屋の雰囲気を残しつつ、西洋の建築技術も用いた和洋折衷の劇場。柱が少なく、どの席からでも舞台が見やすい設計になっている =熊本県山鹿市(鴨川一也撮影)
    江戸時代の芝居小屋の雰囲気を残しつつ、西洋の建築技術も用いた和洋折衷の劇場。柱が少なく、どの席からでも舞台が見やすい設計になっている =熊本県山鹿市(鴨川一也撮影)

    今年、開業から110年を迎えた、熊本県山鹿(やまが)市の芝居小屋「八千代座」。温泉や菊池川の水運で栄えた旦那衆が出資し、設立。レトロな天井広告は旦那衆の店のもので当時の趣のまま再現されたものだ。明治44年の開業時の定員は1274人。満員となれば、さぞ熱気に包まれただろう。

    伝統的な歌舞伎小屋の様式を今に伝える劇場だが、輝かしい時ばかりではなかった。昭和40年代に入ると娯楽の多様化で客足が遠のいた。「お化け屋敷」。閉鎖状態が続き荒れ果てて、そう揶揄(やゆ)されることもあった。

    昭和末期から平成にかけて、華やかな時代を知る人たちが立ち上がり、瓦のふき替え資金を募るなど復興運動が起きた。運動の盛り上がりを後押しに昭和63年に国の重要文化財に指定されると、約5年間「平成の大修理」が行われ、本来の輝きを取り戻した。

    歌舞伎や落語、音楽など多くの一流文化人が舞台に上がる一方で、今では地域の人たちが発表する場としても使われている。

    地元・山鹿小の6年生は毎年、卒業前に公演を行う。芝居の脚本から照明まで全て児童たちが作り上げる。自身も山鹿で生まれ育った島木浩次校長(60)が「舞台に立つと八千代座の魅力がより分かる」と20年前に企画。「観光客が集まるのも大事だが、子供に愛着をもってもらい劇場を残し続けてほしい」と語る。

    9月、平成28年の熊本地震や昨年7月の豪雨被害で苦しんだ熊本の復興を願う「くまもと復興国際音楽祭」の皮切り公演の舞台にもなった。今も新しい歴史を刻み続けている。

    数えきれない人の支援で危機を乗り越えてきた八千代座。憧れの舞台として、地域の誇りとしてこれからも輝き続ける。千代に八千代に-。(写真報道局 鴨川一也)


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